鬼さんこちら、
□溶けた約束
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「甘いよ、ロイ」
にやり、と笑う顔は、だけどいつもより覇気がないのが自分でわかる。
だけど今はそんな事どうでもよくて、私はベッドから上体をおこすと ふ、と息を吐き出した。
痛む身体にため息が出る。
まずはこれをどうにかしなくてはいけないな。
すっ、と右手を上げかけて、
そこで気づく。
四本しかない、己の右手。
本来指が在るはずのそこには、まるで始めから存在しないかのように綺麗な皮膚だけが見えて。
嗚呼、溶けてしまったのか
ぎゅ、と握れば、あの小さな手の温もりが思い出された。
優しい子、小さくて、可愛くて、愛しい彼女
私を守って、溶けてしまった彼女
帰ってきて、と、
病気をするな、と、
約束をした小指は、今はもう
「…無くなって、しまったよ…ニーナ…」
ごめん、なんて
安すぎる言葉しか浮かばない私は、
一体あの子に何をしてあげられたんだろう。
与えられるばかりだった自分に、
ほとほと嫌気がさした。
、