鬼さんこちら、

□溶けた約束
2ページ/3ページ





「甘いよ、ロイ」



にやり、と笑う顔は、だけどいつもより覇気がないのが自分でわかる。

だけど今はそんな事どうでもよくて、私はベッドから上体をおこすと ふ、と息を吐き出した。

痛む身体にため息が出る。



まずはこれをどうにかしなくてはいけないな。




すっ、と右手を上げかけて、
そこで気づく。



四本しかない、己の右手。

本来指が在るはずのそこには、まるで始めから存在しないかのように綺麗な皮膚だけが見えて。



嗚呼、溶けてしまったのか



ぎゅ、と握れば、あの小さな手の温もりが思い出された。

優しい子、小さくて、可愛くて、愛しい彼女




私を守って、溶けてしまった彼女





帰ってきて、と、
病気をするな、と、

約束をした小指は、今はもう




「…無くなって、しまったよ…ニーナ…」





ごめん、なんて

安すぎる言葉しか浮かばない私は、
一体あの子に何をしてあげられたんだろう。

与えられるばかりだった自分に、
ほとほと嫌気がさした。





次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ