鬼さんこちら、

□錬金術師の苦悩TT
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「へぇ、お母さんが2年前に…」

「うん、
“実家に帰っちゃった”って
お父さんが言ってた」




次の日も、
エド達は資料を探してやって来た。

長時間本と格闘をする彼らを見ていると、
本当に10代前半か?と疑問に思う。


私がエド位の頃は、
まだまだ本より外だったな…




ぽつりぽつりと話す
ニーナとアル君を見ながら、
私はこっそりとため息をついた。






「…………はあ、…」



本当は、
一泊お世話になるだけのつもりでいた。

だけど、昨日の帰り際、
家を出ようとする私を引き止めたのは半泣きになって縋り付いてきたニーナで。


その様子が余りにも必死で、
つい、
後三日の停泊を約束してしまったのだ。





アル君と向かい合って座るニーナは
少し寂しそうに笑い、だけどもすぐに
にぱりと笑う。



母親がいない、なんて、
普通の子供なら笑えない事実だ。

嗚呼、
やはり、この子は強い。
まだまだ甘えたい盛だろうに、
ちゃんと自立の心を育てている。



そこで、
ふと私の視線に気がついたニーナはにぱりと笑うと体当たりの如く抱き着いてきた。



「でも!お父さん優しいし、アレキサンダーもいるし、時々はエリーおねーちゃんも遊びに来てくれるから平気だよ!」



ぎゅっと抱き着いてくる腕が切なくて、
やっぱり少し強がっているのがわかる。

何も言えない私は、
ただ彼女を抱きしめ返した。




「…あぁー、
毎日本ばっか読んで肩こったなぁ」

「肩こりの解消には適度な運動が効果的だよ、兄さん」

「そーだな。
ちょっくら庭で運動してくっか。」



オラ、犬!運動がてら遊んでやる!

そう言ってアレキサンダーを指差しながら立ち上がったエドは、きっとニーナの強がりに気づいていたのだろう。
それに続き、アル君も腰を上げて彼女の手をとる。

ニーナを外へと促す彼らを見て、
不器用な優しさにくすりと笑った。



庭へと向かう彼らに
いってらっしゃいと手を振って。


さて、
私はタッカーさんの自室にコーヒーでも届けにいこうかな。






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