鬼さんこちら、
□車上の戦い、T
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おいおいおい、勘弁してほしいよ全く。
アル君と別れてから数刻、
やっと動き出した列車に身を任せていれば、突然に心地好い沈黙を破った銃声音。
読んでいた本からちらりと視線をあげれば、そこにいたのはマシンガンを構えた男達だった。
まさかの本当にトレインジャック。
首謀者はアル君だったりしないよな…
そんな冗談を考えていれば、
急にこめかみに冷たい物が押し付けられた。
背後から小さな悲鳴があがる。
「おい、てめぇ。
状況わかってんのか?この列車は我々“青の団”が乗っ取ったんだよ」
「分かってますよ。
てか、“青の団”てなに?
何で青?メンバー皆青好きなの?
まさか皆マリッジブルーみたいな?
確かに結婚は墓場なんて言われてるけどね、だからって日頃の憂さ晴らしにテロは頂けないと思うけどなあ」
「ちがうわああああ!」
突き付けられた銃口が煩わしくて、
つい苛々と早口にまくし立ててしまう。
そうすれば、マリッジブルーな男達は青筋をたてて怒鳴り散らしてきた。
「てめ、ふざけやがって…!
その脳天ぶち抜いてやる!」
「まあまあ落ち着いてよマリッジブルーマン」
「誰がマリッジブルーマンかああ!」
「そんなに青が好きならさ、」
言いながら私は立ち上がる。
銃口を突き付けてきた奴の背後の男も、
警戒してかこちらへ銃を向ける。
−好都合だ
「青痣いっぱい、作ってやんよ!」
大きく屈伸をして跳躍。
銃口を突き付けてくれた彼には顔に一蹴りを入れる。
これで顔面ブルーマンだ。
次いで、その反動を利用してまた跳躍。
背後の男が顔を引き攣らせ指をすべらせたので、引き金を引く前に銃を蹴飛ばして。
鳩尾に一発重いのを沈めた。
「…さて、」
この車両にいたテロリストは二人だけだったので、トランクからロープを取り出しぐるぐる巻にしておく。
そしてその辺にごろりと転がすと、
首を回して軽く体を解した。
「…あ、あんた一体…」
そこまできて、
やっと今までぽかんとして事の成り行きを見つめていた他の乗客が動き出す。
後ろの席のおじいさんが瞬きをしながら尋ねてきたので、私は準備運動を続けながら答えた。
「本の続きが気になるんだけど、
このままじゃゆっくり読めないからね。
ちょっと殴って黙らせてくるよ」
そういうと、おじいさんは目を点にして
は、?と呟く。
それを横目に見つつ、
私は窓から車上へと飛び乗った。
、