鬼さんこちら、

□プロローグ
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私は死んだ。
戦争に巻き込まれて。







私の町は、決して大きくはなかったけれど、織物が栄えていてとても穏やかな場所。

“戦争”の本当の意味なんて知らなかった毎日で、自分がそれを体験する日が来るとも思わなかった。






だけど、それは唐突に始まった。




アメストリスとイシュウ゛ァールの衝突故の戦い。


小さな波紋はやがて大きな波へと変わり、
私の町も戦火に飲み込まれた。



私はなんとか逃げ延びたけれど、
家族は全滅。
財産は紛失。

挙げ句、知らない孤島へと流されて。


そこは、飢えと渇きと灼熱の地獄だった。


孤独な私は、
苦しくて辛くてこわくって、
じわじわと近づく“死”という影から一人逃げ惑う日々で。




だから、喉の渇きがピークに達した時、
なんともなしにやってみたんだ。






「海にはこんなに水分があるのに、
飲めないなんてせちがらすぎるって…」




嗚呼、そういえば、
母が言っていた気がする。


一つのものから、一つのものを錬成できる凄い技術の話。
今それが出来たなら、
この海全部が飲み水に変えられて、好きなだけ飲めるのに。



「……、」




−ぱぁん、




「………は、」




やっぱ駄目か。



合わせた手はまるで神に祈るようで、
でも神様がいたら私はこんな事になってないんじゃないかって考え直す。


「……はは、
次は必ず天寿全うしてやる」




見てろよ神様、

そっち逝ったら一発グーで殴ってやるから。






そこで私は気を失った。





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