鬼さんこちら、
□錬金術師の苦悩TTT
3ページ/3ページ
こんこん、
寝てしまったニーナをベッドに横たえていると、ふいに扉を叩く硬質な音が響いた。
誰だろう、と思いつつも、
この屋敷にいる人はおのずと特定されている。
確信的な口調で名を呼べば、
開けた扉からは予想通りの顔が覗いた。
「何かありましたか、タッカーさん」
「…ああ、ちょっと、手伝ってほしい事があるんだ…」
そう答える彼の顔は蒼白で。
異常な雰囲気に、私は自然と喉が引き攣るのを感じた。
「…手伝ってほしい事?」
復唱してみた所で、なんの時間稼ぎにもならない。
いや、そもそもなんのための時間稼ぎだ?
自然に脳裏に浮かんだ言葉に、
疑問を抱く。
逃げろ、
逃げろ、
逃げろ、
警報をならす本能に、
逆に足が竦み上がった。
逃げる?タッカーさんから?何故?理由がわからない。だけど、本能が煩い程告げるそれを無視することも出来ない。それに、逃げるならニーナも一緒に行かなくては。一人にしてはおけないじゃないか。
その時、
「…エリーおねーちゃん…?」
気がつかなかった。
眠い目を擦りながら起き上がる存在に。
「…っニーナ!」
咄嗟に彼女のほうを見て、
−がんっ!!
「…っ…ぅ…」
後頭部に思い衝撃を感じたと同時に、
私は意識を手放した。
「……ニ、……ナ……」
嗚呼、護らなくちゃ
あの子だけは…
あの子だけは…!
それだけが、私の頭の中を閉めていた。
→To be next