羅針盤と銃一丁
□蝉が告ぐ
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勝山が熱弁する中、その熱意が馬鹿馬鹿しいとばかりに伊國がせせら笑う。
「お家の大事、
…ってやつか?」
「…僭越ながら勝山殿。」
「何だ!?」
笹岡の挙手に、勝山は苛立ちを隠そうともせずに眉根を寄せた。
「隠し立ては却ってまずい事になりませんか?
人の口に戸は立てられぬもの…、
心証を悪くしてまで隠さねばならない事なのでしょうか?」
「ならない事だ!
それがわからんか!!」
「私は賛成できませんね。
塩野に限らず、腹を割って助けを求めた方が早い。
そもそも、もっと昔にそうしていれば…」
「そなたの企みは分かっておる。
はっきり言ったらどうだ!!」
「私は殿を心配しているだけです」
「勝山殿こそ、企みとおっしゃるなら
私が何を企んでいるか明らかにして頂きたい。」
「その手には乗らん!!」
それは、まさしく猿と犬。
終わりの見えない喧騒に、彩売りはとても楽しそうにからからと笑う。
その様子を薬売りは訝しげに見つめた。
いつの間にかヒグラシの声がしなくなっていた事に、はたしてこの時、何人が心を止めたのか…
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