▼高等部・男主T


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何やな―― 棗――…

あいつ最近、ウチの事絶対避けてる気がする.......

ウチ何かしたか――?






最近、なぜか棗に冷たくあしらわれていた蜜柑。

それに加えてアリス紛失事件。

蜜柑の心はモヤモヤ真っ只中。

そんな心を抱えたまま、特力の教室の扉を開けるのだった。

開けた途端、廊下にもれる話し声。

声からして、2人ほど。

聞いた事ない声やけど、誰やろか?






そう思っていると、後ろのほうからも話し声が聞こえてきた。

「あ、翼先輩、美咲先輩、メガネ先輩.....っ」

楽しそうに話しながらこちらにくる3人は、扉に手をかける蜜柑に気づく。

「おぅ、蜜柑!」

翼が片手をあげる。

「どーした蜜柑、入らないのかー?」

美咲が不思議そうに言う。

「なんか、話し声が聞こえてん」

3人は顔を見合わせてから、翼を先頭に中へ入る。

その途端、もわっとした空気が皆を包む。

「うわっ何だこの部屋、空気わりーっ」

入ってすぐに翼が言う。

どうやら煙草の煙らしい。

と。

「おー翼ー」

話し声の主の2人が会話を中断し、こちらを見る。

「.....詩!」

翼の顔が驚きの表情へと変わる。

それは美咲もメガネ先輩も同じだった。

翼たちの視線の先には、ミルクティー色の髪の高等部生。

「おい翼、俺もいるぞー」

そう言ったのは、煙草を片手にヒラヒラと手をふる高等部生。

「げっ殿」

こちらには、あからさまに嫌な顔をする。

美咲もメガネ先輩も同じ反応。

蜜柑はというと、ひとりポカンと口を開けている。






「そういやお前には何も言ってなかったなー蜜柑」

蜜柑の様子を見て、翼が言う。

「こいつは殿内明良。特力の代表だよ、これでも...」

煙草を吸っているほうを示す翼。

「よろしくなーチビちゃん」

へらりと慣れたような笑みを浮かべ、未成年なのにたばこを吸っている姿もあいまって、なんだか“オトナ”な雰囲気を感じた、その高等部生。

この人が、特力の...代表...




「んで、こっちは東雲詩。蜜柑も少しは知ってんじゃねーか?有名だし」

翼は隣の先輩を示した。

「よろしく、俺は危力の代表だよ」

やわらかい声だった。

彼の前髪は目が隠れるほど長く、その表情は読み取りづらいが、やわらかく微笑んでいるのは雰囲気からわかる。

こちらは特力の代表として紹介された彼とは打って変わって、少年のような親しみやすさを感じた。







―と....特力の代表.....っ!?


それに危力系の代表......っ!?





当たり前のようにそこにいる2人。

こんなにも自然に幹部生の2人に会っていることに、蜜柑は驚きを隠せない。

詩のことは、この学園でふつうに過ごすだけでもよく耳にしていた。

皆が言ったとおりの美形で、独特な雰囲気を持っているけれど、決して近寄りがたいわけではない。

そして、初めて会う特力の代表。

笑みを絶やさない彼を、いい人そう、と解釈するピュアな蜜柑が、みんなを心配させた。

「お前の将来が不安で仕方ないよオトウサンはぁ」と言って、なぜか近づくなと念を押して言ってくる翼の言葉を、

蜜柑はちゃんと理解できないでいるのだった。








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