▽初等部・男女主T
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「棗君、ドッジボールの日以来、何だか機嫌悪いよね....」
「いつもなら蜜柑ちゃんのこと無視するのに」
「何かあったのかな....」
そんな会話が教室から聞こえた。
ドッジボール....
あの後、任務があったんだっけ。
リンは思い出していた。
その日の任務は棗とは別の任務で、お互いその内容は知らなかった。
やはり、天才と呼ばれる黒猫でも、任務の内容が身体や精神に堪えないわけがない。
慣れたはずの私でも、この学園生活のギャップには苦しむ。
私は学園に来て間もないが、棗はずっとこの日々を送っていたのだ。
学園の裏側を嫌というほど見て、大人を信用できなくなるほどに。
光と闇を行き来して、光を見たかと思えば一瞬にして闇に突き落とされる。
当然、心は疲れてしまう。
「琥珀くんも珍しいよな。
棗くんに話しかけるなんて」
「でもあれって、佐倉のことかばってたよな」
「八神家の琥珀くんがそこまでして守りたい蜜柑ちゃんって一体...」
琥珀と棗の険悪な仲は皆知っていた。
しかし、昔はそんなことはなかったのだ。
むしろ仲が良かったといえる。
それを傍で見てきた流架は、今の2人の関係をとても寂しく感じていた。
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