▽初等部・男女主T
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棗と琥珀の微妙な沈黙の中、いきなり教室の扉が開いた。
教室から出てきたのは、教師らしき大人。
中性的な顔立ちで、金髪だ。
「わあ!
ちょうどよかった棗君に琥珀君、一緒だったんだね。
ちょうど新入生の紹介をしていたところで」
「あー僕は耳に入れてます。
無効化の、女の子でしょ?」
「さすが琥珀君。
でも勝手な行動はあまりしないでね。
僕らがおじいさんに怒られちゃうんだから」
「あーもう報告いってんだね」
もちろん、とその教師は先ほどの琥珀の行動をとがめていた。
「それで、後ろにいるのはこれまた新入生の五条 リンちゃんだね。
迎えに行けなくてごめんね。
同時期に新入生2人でバタバタしちゃって。
僕は鳴海です。
みんなからはナル先生ーなんて呼ばれてるんでよろしくね」
ウィンクしながらその教師は自己紹介した。
「じゃあさっそく、みんなに紹介といきますか」
そんな鳴海の横をすりぬけ、棗が一足先に教室へ入っていった。
これからもう一人の新入生の紹介をするというのに、教室の空気は最悪。
それは、棗の登場によるもの。
空気がぴりつくのがわかった。
棗は、立ち上がって不安そうにみつめる、金髪のハーフ顔の男の子、乃木流架のいる席に向かっていた。
と、そのとき、
「ねーねー棗君きいてー!」
空気を読めないのか、パーマが特徴的な正田スミレが、先ほどの蜜柑の入学への不満を言おうと棗に話しかける。
クラス中が、そのスミレのハートの強さには引いていた。
案の定棗は、スミレのいる机をガンっと蹴った。
その様子に、みなが怯えるのは当然だった。
棗はみんなの視線が集まる中、流架の隣に座った。
「....やばいよ、棗さん罰則面付けてるよ」
「あれ付けてる時の棗さん、超機嫌悪いからなー」
「あれって付けると脳に電流が走って頭痛とまんねーらしーし」
教室内では、そんな言葉がささやかれていた。
しかしそんな空気をまたもとに戻すように現れたそのクラスメイトに、教室内はわぁっと沸く。
「琥珀くん!」
「帰ってきてたんだあ」
「おかえり!琥珀くん!」
棗や蜜柑の時とは違う、歓迎ムード。
蜜柑の目に、それは王子様かのように映った。
それも、その容姿端麗さともちあわせたやわらかい雰囲気から。
棗とはまさに正反対。
「このクラスのもう一人のボスよ」
蛍が、簡潔に教えてくれた。
それには、合点がいった。
「クラスは主に何かと不満をもって発散したい棗くん派と、対照的に平和主義の琥珀くん派に分かれてる」
なるほど、と蜜柑は思った。
―あっ今、目があった...?
蜜柑は気のせいかと思ったが、琥珀はまっすぐ蜜柑のもとへ向かった。
「やあ、初等部B組へようこそ。
佐倉蜜柑さん」
「え、なんでうちの名前...」
「僕の名前は八神 琥珀。
仲間が増えるのは嬉しいことだ。
よろしくね」
蜜柑は出された手を、無意識のうちに握っていた。
それを、気に食わぬ様子で見ていたのが棗だった。
それを琥珀はしっかりと背中で感じ取っていた。
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