▽初等部・男女主T

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「君には、一般の生徒と同じように学園生活を送ってもらう。

しかし、君自身の素性は一切、隠すように。

これまでしてきた任務や所属していた組織のこと、これからつくであろう任務のことは他の生徒に口外禁止だ。

難しいことではないだろう。

しかし、こちらとしても罪人を野放しにするリスクは負えない。

それなりの措置はとらせてもらう」

久遠寺は、仮面の男、ペルソナに合図した。

ペルソナは何やら布で覆われたものをもって前に出る。

その布から出てきたそれは、一目みて、制御装置のようなものだろうとわかった。

しかし、このような形状はみたことがない。

組織にいたときの制御装置は、腕輪やピアスといったものだった。

銀色に光るそれは、腕にはめるには大きすぎる。

「最新の制御装置だ。

能力を制御するほか、反抗的な態度が見受けられれば罰則にも使える」

そうだろうな、とは思っていた。

そしてそれは、私の意思を確認することなく首につけられた。

犬のようだ。

誰ともなく、皆そう思っていた。

久遠寺だけが満足げにほくそ笑む。

「つけたら最後、研究機関でなければ外せない。

外そうとしたり、しかるべき手順で外さなければ電流が流れる仕組みだ」

人を道具としか思っていない、久遠寺の考えつきそうなことだ。

その首輪をつけた代わりに、手錠がはずされた。

「その首輪は君の能力で消せるだろ?

ここの教師や職員でもその器具は知らない者が多い。

こちらとしてもそのほうが都合がいい」

すぅ...とまがまがしい銀色の輪はあっとゆうまにリンの首になじんだ。

見た目では、たとえ至近距離でも首輪をつけているのかはわからない。

リンの能力のひとつはそういう能力だ。

頭でイメージしたものを、具現化することができる。

その具現化できるものの幅も広かった。

そして、渡された、あのネックレス状の2つ刀。

これも、リンは戦闘時に本物の刀と化して使うのである。

「それは返すよ。

我々が持っていても意味のないもの。

これからの任務での君の働きに期待するよ」

久遠寺のいうとおり、これはリンにしか使いこなせないものだった。

「わかっているとは思うが、私の命令や任務以外での使用は禁ずる」

リンは受け取り、首にかけ、刀の部分は服の下に隠した。

久しぶりに手にしたそれは、懐かしくも、無機質で冷たかった。

私が生きた分だけ浴びた血を思い出させるそれ。

相棒でもあり、一生染み付く記憶でもある。

「それと...

ないことを願いたいが...

もし君がその自分の人生に自分で終止符を打とうと考えても、無駄だということを伝えておこう」

久遠寺は笑みをくずさず言った。

それはすなわち、自殺を防止する機能もついているということ。

組織でも似たようなものを使っていたことがある。

重要な人物、捕虜、拷問対象につけられたそれは、自殺しようとした意思や行動を察知し次第、電流が流れ気絶を伴う。

死さえも、私には許されていないのだ。

生きることも、死ぬことも、自分の手中にはない。

すべてを握っているのはこの、目の前の男だった。






「私が絶望するとでも思ったのなら、それは間違い」

リンの声は冷たかった。

「自由なんて、生まれたときから望んでいない」

せめてもの抵抗、抗い。

恐怖なんかでお前に支配されない。

たとえ手足は動かしても、感情までお前の望むようには動かさない。






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