▽初等部・男女主T
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この、目の前にいる人物を知っているといっても、こうやって対峙するのは初めてだ。
仮面の男や監視役の男達が部屋の片隅で見守る中、リンと久遠寺は向き合う。
学園の表はもちろん、裏側までも総べ、国をも動かすほどの地位にいる、強大な力を持つ者。
その正体は、不明。
どんなアリスの持ち主かも、年齢さえも不明だ。
君を学園に呼んだのは他でもない_____
久遠寺は話を始めた。
「君が罰せられるほどの数々の罪を犯してきた事実があるにもかかわらず、未成年ということで日本の法律では君を裁くことができない。
そこで、ここが君の鑑別所がわりになるというわけだ」
外と隔絶され、高等な結界使いのいるいわば監獄。
今さら子ども扱いされるジョークはきついが、確かにぴったりな場所かもしれない。
「つい最近まで我々が苦しめられたあの紅蛇が手元にくるなんて...
願ってもないことだ」
久遠寺は身体に不釣り合いな大きな椅子に腰かけ、こちらをなめるようにみる。
「これからは、こちらの手駒として存分に働いてもらうよ」
アリス学園が裏でやっていた任務のことは知っていた。
組織の時の任務とやることは何ら変わりない。
変わったといえば忠誠を誓う頭だけ。
利用するものと利用されるもの。
この世に存在するものはその2種類に分けられる。
それがものの道理で摂理。
私が後者であるだけのこと。
余計なことを考えても仕方がない。
ただ、このどうしようもない運命の中でも、確かめたいことがひとつだけあった。
同じ利用される側として、一緒に底辺を歩んだ、あの人は今....
「リンっ!
きっとまた会える!
それまで、生きるの!
私は、死なないから...っ」
爆音や轟音の中叫ぶ声。
炎のゆらめく先にその人は消えた。
生きているのかもわからない。
生きていたとして、どこにいるのかもわからない。
それでも、どうなったのか、知りたかった。
ここにいれば、この学園でこの久遠寺のもとにいれば、それがわかるかもしれない。
そんな淡い儚い期待だけが、ここで利用される意味だった。
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