▽初等部・男女主X


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「棗くんは、葵ちゃんに会いにきたのかな?」

自分で言った問いに、鳴海はあーでも...と少し考える。

「この前も来てたよね?

頻度たかいねーさすがシスコ..じゃなくて妹想いの棗くん」

わざとかのように口をすべらす鳴海に、棗はちっと舌打ちする。

「今回はちげえよ」

あら、と鳴海が驚いたのよりも、はるかに蜜柑のリアクションのほうが勝った。

「ええ?!葵ちゃんに会わへんの??」

ショックを隠し切れない蜜柑。

なんでやーっと泣きすがりつく勢いにうっとおしがりながらも、棗はいう。



「安藤 星(ヒカリ)だよ」



棗の言った言葉に、鳴海はあーっと納得いった様子。

琥珀もまた、「なんだ知ってたのかよ」とつまらなそうに言った。

「みんなにサプライズのつもりだったんだけどな」

と琥珀は言うのだった。

安藤、という苗字をきいて、流架はまさか、という顔をする。

蜜柑はさっぱりといった感じだった。




「おまえがいないあいだ、翼から連絡きたんだよ」




めんどくさそうに棗は琥珀にいう。

なるほどな、と琥珀も理解するのだった。

そして蜜柑は、翼という名前に反応する。

「つばさって...翼先輩のこと...?」

「それ以外誰がいるんだよ」

自分で面会するといったのに、棗は終始めんどくさそうだった。

蜜柑はその棗の言葉でやっと、理解したようすだ。




「まさか、翼先輩の、妹がここにおるの...?」



固まった蜜柑に、棗のかわりに「いえーす」と答える鳴海。

その瞬間また蜜柑は大袈裟に驚き、そのあとわくわくした様子で

「ウチ!会いたい!!

翼先輩の妹に会いたい!!」

というのだった。

一葉は感情が忙しい人だな、と思うのと、棗の塩対応の意味が少し分かった気がした。



けっきょく葵にも会いたいという蜜柑の熱烈な希望で、授業中の音校1年生の教室をみんなで訪問することになった。

本来はあまり例のないことだが、校長や理事長が一緒だからなんでもいいらしい。

蜜柑は、翼の妹に会いにいくという棗が、なんだかんだいつも言い合いするわりに、

やさしいのだなと思い、それもまた嬉しかった。

きっと、翼の代わりに面会し、兄の近況でも伝えてあげるのだろうと思っていた。

それがまさか...

あんなことを言うなんて...

やはり棗は棗だった...






「お前向いてねーよ。

才能ねーからさっさと辞めろ。

ドヘタクソ」




そう、初対面の翼の妹、安藤 星に言い放ったのだ。

これには皆絶句。

言葉を失う以外に何もなかった。

一葉も、棗の言動には引いていた。

しかし、何か理由もなくそんなことをする人とは思えなかった。

琥珀はやれやれと、「お前はいつも言葉がトガりすぎなんだよ」とつぶやいていた。




「ちょ...!

棗、なんちゅーこというてんねん!」




蜜柑の発した言葉に、氷のように固まった室内が、やっと生気を取り戻したようにざわざわしだした。



「あなたは...一体誰ですか?」



星もまた、初対面の相手にいきなりそんなことを言われ、困惑していた。

困惑しないわけがなかった。

そんな星に向かってさらに言葉を浴びせる棗。




「誰でもいいだろ。

とにかく、この学校を辞めろ。

それがお前の兄貴からの伝言なんだよ」




棗の目的がなんとなくわかり、琥珀ははぁっとため息をつくのだった。







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