▼高等部・男主T


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「久しぶりだなー、棗とこうやって2人きりになるの」

詩は伸びをしながら言う。

途中でのだっちとは別れ、詩は本部の廊下を棗と2人で歩いていた。






「まーた見ないうちに男前になっちゃって」

詩は棗の頭に手を置き、からかう。

こんな張り詰めた状況でも、こうやって空気を緩ませるのが彼らしさだ。

さらにいえば、この学園でこんなふうに棗に接することができる人は珍しい。

「...うっせ」

案の定、棗は素っ気無い返事。

少し不機嫌そうだ。

不機嫌なのはいつもだけど...

「.....お前、蜜柑にベタベタ触んな....あとあのジジイも」

棗はムスっとした表情で言う。

「あ...?」

詩は何のことやらと首を傾げ、記憶をたどる。

それでも分からないので奥の手を......







「....!....え、まじ!?アレ、蜜柑の頭撫でただけじゃん!」

先輩としての最大限の慰め!と言って、詩は驚く。

「ククク.....はあ〜そう言うわけね、フム」

詩は1人で面白そうに呟く。

棗はムッとし、詩のほうを向く。

そして、また一段と眉根を寄せる。

詩の手には、式神があった。

きっとそれは、自分の気づかないうちに詩によって自分につけられたもので......

それはつまり、心を読まれたと同義。

「てめぇ...」



―ボッ....



いきなり、詩の手元に火がつく。

そして、式神を跡形もなく燃やし去ったのだった。

「あっつ!ばっ...てめ、このガキ!」

詩はわーわー騒ぎながら、ぶんぶんと手をふりまわし、熱を冷ますのだった。








初めて知った後輩の一面に、詩はにやにやがとまらない。

「ふ〜ん、蜜柑ねぇ.......」

まさか、あの棗がそんな感情を抱く子が現れるなんて...

詩は棗の隣を歩きながら、感慨深げにつぶやいた。



出会った当初は、見るものすべて敵かのような、人でも殺しそうな目つきをしていたというのに...





彼もまた、年頃の男子。

それを感じられて、うれしくなる詩だった。






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