▼高等部・男主T


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「まさか、また学園から紛失者が出るとはな」

詩が、はぁっと溜息を漏らす。

その少し後ろを歩くのは、学園総代表、櫻野秀一と、副代表の今井昴。

3人は、本部の廊下を歩いていた。






「情報が早いね」

秀一が、少し呆れ気味に言う。

「まぁ、これくらいのことなら自然と耳に入ってくるよ」

詩は得意げにはにかむ。

「2人とも、これから高校長のとこ行くんだろ?」

詩はさらりと言うが、秀一と昴は眉を寄せる。

「なぜ知ってる?」

昴が固い表情で言った。

「企業秘密♪」

詩は陽気にそう言った。

その言葉にさらに眉をひそめる2人。

「そんな顔すんなって」

前を歩くのに、2人の表情を察したらしい詩。

「それ知ってるの俺くらいだから」

詩はくるっと振り向いて笑う。





「詩....お前どこまで.....」

秀一は探るように見つめる。

「大丈夫だよ、俺は俺で、うまくやるから。

お前らと向かう方向は一緒。

あの頃から...それは変わらない」

すべてを悟っているようすで、詩はいう。





「....すまない」

秀一は小さくそう言った。

「何にあやまってんの。

俺を誰だと思ってんだよ、とりあえずこの件はまかせとけ」

僕らが声を大にして、言いたいことを言い合える日は、来るのだろうか。

安心させられてしまう彼の笑顔を見るたびにそれを思い、

名ばかりの学園代表という肩書きが、うっとうしく感じた。

しかしこれも、僕が、僕たちが選んだ道なのだ。

詩と同じようには戦えないと気づいたときから、気づかされた時から...

僕らはその瞳に、頼るしかなかった。





「それじゃ、俺はここで」

詩は、2人とは違う方へ向かうらしく、曲がり角で手をふる。

「...ああ」

頷き、2人で詩の背中を見送った。

何度この背中をこうやって見送ってきただろうか。

同じ環境で歳を重ねたはずなのに、高等部になった今でも、詩は遠い存在のように感じる。

修一と昴は、なんとなく、お互いが同じようなことを思っていることはわかっていた。

お互い何か言うわけでもなく、向かう先へと急いだ。









指定された部屋で待つ詩____



その時は迫っていた。

じきに、護送車≠ェ学園へ来る時間だ。





今回のアリス紛失事件に関与していると思われる組織、Z≠フ一員が捕まり、そいつの取り調べが、学園で行われることとなったのだ。

そのため、詩は万が一のために本部待機を命じられていた。

そして詩は今日、その万が一が起こる事を知っている。






―12年くらい経つかな。2人と会うのは.....






詩は懐かしさと、これから起こることへの不安が混ざる複雑な心情で窓の外を眺めた。








―どうか、できるだけ穏便に済みますように.....








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