▽初等部・男女主T
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パーン.......パン........パンパン____........パチパチ......
学園上空に、色とりどりの花火が打ち上げられた。
生徒たちは、それに合わせて歓声をあげる。
学園内は、多くのにぎわいに満ちていた。
いよいよ、待ちに待ったアリス祭が始まる____
開会式といえば、偉い人の長い話ばかりで形式にのっとったつまらないもの、早く始まらないかな、とじれったく思うのが至極当然。
しかしそんな中でも、生徒たちの目はしっかり壇上に注がれていた。
それは、壇上にあがっている幹部生に理由があった。
そこに座るには、まだ小さすぎる容姿が、異様にも見えた。
1人は、壇上の一番端にだるそうに座る、危険能力系唯一、星階級がスペシャルの日向 棗。
そしてもう1人は、その隣に代表の雰囲気さながらに座る、特別能力系代表代理の八神 琥珀だった。
「こんなガキらに幹部生やらせるって、この学園どーなってんだよ」
「ちょっと静かに!誰かに聞こえたらどうすんの。
八神家は特別なんだから...」
「まあ、あの落ちこぼれクラスにそれくらいしかスペシャルがいねーなんて、自ら滑稽さを現してるとしか思えないな」
「あいつらもどんな汚い手使って八神家を余りものクラスに引き込んだんだろーな」
「それよりも俺はあいつが気に食わねえ...日向棗....」
「だよな。でかい面しやがって.......」
学園復帰初日が、学園祭か....
こうやってもてはやされるのには慣れているが、しばらくはそっとしておいてほしい気分だというのに。
しかも、公の場ということもあって、水無月や弥生のほかに八神家の警護が学園中にいた。
琥珀にとってそれは、楽しめたものじゃないのでうんざり。
きっと棗だってわけもわからず勝手に祭り上げられ見世物状態。
心中穏やかではないだろう。
そう思っていた時だった。
「お前、けが大丈夫かよ...」
ふいに話しかけられて、少し驚く琥珀。
でもそれで、彼が心配してくれていたことに気づいてふっと顔がゆるむ。
「まさかあの場にいた誰よりも動けるのに、誰よりも重症になるなんて思いもしなかったけどね。
さすがだよ、やっぱり日向のアリスは」
琥珀のいうとおり、あの場で一番ケガを負ったのは、琥珀だった。
一瞬にして鳥獣に変態し、翼で皆を守ったのだ。
あの時、蜜柑が突き飛ばされたことで一時的な感情からアリスを使った棗は、返す言葉もない様子。
「でも心配には及ばないよ。
このとおり、八神家は治癒力も高いんで」
そう言った琥珀には傷痕一つ残っていないようにみえた。
「それと、みんなを守れてよかった。
リンを守れたから、いいんだ」
それにしても学園に戻ることが遅かった。
それに関しては棗も思っていたが、あえて聞くことはなかった。
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