▽初等部・男女主X


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琥珀たち3人がこの町へ来て、早くも1か月が経とうとしていた。




土曜日の午後、梓とリンはふたり、駅前まで買い物に来ていた。

今日は久しぶりに部活がなかったのと、梓がたまには2人きりでと誘ってくれたのだ。

思えば、彼らが来てから2人きりになることはあまりなかったので、なんだか久しぶりの感じがした。

そう思っているのは、梓も同じらしかった。

「久しぶりやなあ、この感じ」と楽しそうにいう。




「うちもにぎやかになったやろ?」

いたずらっぽく梓はいう。

「急すぎるよ...あんなの」

ここはちゃんと言っておかないと、と思った。

「まあ、あんたを混乱させることになるとは予想してたし、

それは本当に申し訳なかったって、思ってるけど...

あたしだってこのことに関してはいろいろと迷ったんやで。ほんま。

...でもまぁ...たまにはこういうのも、ええんとちゃう?」

申し訳なさそうな顔のあと、からっと言い放つのが梓らしかった。

梓なりに何か考えがあっての行動だとは思うが、1か月経ってもその意図がよめなかった。




「ずっといるわけじゃ、ないんでしょ?」

リンの言葉に苦笑する梓。

「なんや、そんなに邪魔おもってたん」

別に...そんなんじゃないけど...

小さく言うリン。

「心配しなくても、今日と明日、あの子はおらんよ」

前の日曜日もいなかった。

平日でも、たまにいない日があったけど、琥珀はそれに関して何も触れなかった。

アリスの学校と行き来しているとは、クラスメイトに話していたけれど、

それだと、毎日いる棗と蜜柑の説明はつかない。

隠していることはわかったけど、あえて触れるようなことでもないと、リンは思っていたし、

触れられたくないことがあるのは、自分も同じだった。

誰だって、他人に踏み込まれたくない部分をもっている。




「まあ、ただの一般人とアリスの“交流”じゃないってことは、さすがにあんたも気づいてるか...」

頷くリン。



「あたしもあの子ら...

特に琥珀の意図はようわからん。

でも、そんなに長くはおらんと思うで。

あの子も忙しいみたいやし...

目的を達成でもしたら、元のとこに帰るんとちゃうかな」



あたしも皐月も、別に迷惑とは思わんからいつまでいてもええんやけど、と梓は言うのだった。



“目的”

そうきいて、はっとした。

無意識に手が、胸元にのびた。



ー僕がここに来た理由。

それは、君に会うためだよ...



ー僕はそれを、君に返しに来たんだ




「リン、あんたそれ...」



梓は、気づいたらしい。

視力のない目を、リンへ、そしてその胸元へ向けていた。

梓自身、驚いていた。

さっきの瞬間、久しぶりに感じた...その力。

リンの力を、懐かしいその力を確かに隣に感じたんだ。



リンは服の中からその石を出す。

梓の反応をみて、確信した。

やっぱりこれは...



「これが私の石だっていうのは、本当だったんだね」



琥珀は確かにそう言ったのだけど、正直半信半疑ではあった。

アリスだったころの記憶もないということは、そのアリスを使った記憶もないのだから。

たとえそれが自分の一部だったとしても、自信がもてなかった。




限りなくクリアに近いそれ。

教会でみた花束の中の石たちは、すべて特融の色があった。

同じ赤でも濃かったり、オレンジに近かったり...

梓は、それがその人とアリスの個性だと言った。

私がつくった石は、なぜ、透明なのだろうか....

そしてわずかに混ざるブルーは、何を意味しているのだろうか。




この青と彼の瞳の色を重ねてしまうのは、何か過去と、関係あるのだろうか...





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