▽初等部・男女主X


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日曜日。

リンの顔は引きつっていた。




「ただいま」




と言って、いつものように入った梓の家。

そのリビングで最初に出くわした人物に、驚かずにはいられない。

びっくりしすぎて、息がとまるかと思った。




「あ...」

と彼は掃除機片手にいう。

リビングの掃除中だったらしい。

いや、そういう話じゃなくて。



「な...んで...」

そう言葉にするので精いっぱいだった。




目の前にいたのは、金曜日に重箱弁当をもってきたあいつ。

“迷惑だ”とつっぱねたばかりの、八代琥珀だった。



「お...かえり...リン」

気まずい中でも、彼はそう言った。

は?

今なんて...?



混乱の中、だるそうに、いつものよれたスウェットを着た皐月がリビングへきた。

「おお、リン。

帰ってたのか」

皐月も、彼の存在には何も気に留めることなくソファにぼふっと身をなげた。

いや...どうでもいいから早くこの状況を説明してほしいのに...

そんな時、階段をおりてきたその人物にまた驚く。




「うそっ

リンやん!!

ちょっと琥珀ーっ

リンがきたら教えてってゆうたのにーっ」

たしか名前は佐倉蜜柑。

3人の体験入学生のうち、2人がなぜここに...

というか、この状況は3人中2人というより...

3人ともいると考えるのが妥当。

思った通り、慌ただしい蜜柑の声をきいて現れた人物。

それが、日向棗だった。




ひきつるリンの顔。

そこへやっと、家主が登場した。



「梓っ」



状況の説明を求むと、リンは詰め寄る。

梓ははぐらかすように笑う。

「ごめんリン、言ってなかったわね」

まるで今説明すればすべてちゃらとも言わんばかりだ。

「いろいろ手続きで忙しくて、正式な日程も先週決まったばかりだったから

なかなか言う機会がないし、手紙よりも会って説明したほうがいいかと思って」

言い訳だということはすぐにわかったが、梓の魂胆がよめなかった。




「3人ともしばらく、ここに泊めることになったから」




なぜ、という部分を、なかなか梓は説明してくれなかった。

そのかわり、彼らとの関係を教えてくれる。

「琥珀は皐月の甥っ子で、

棗は私の甥っ子、それから蜜柑は私の友だちの娘よ」

そんなつながりがあったなんて、知らなかった。

知らなくて当たり前だった。

梓は極力アリスについての話を避けていたから。

それなのになぜ、今になって急に、こんなにアリスがここに集結するのだろうか。

梓の姉は亡くなっているときいたが、きっと梓と姉は似ていたんだな、と思うくらい

棗の瞳が梓にそっくりだった。

対照的に、皐月と琥珀はまったくといっていいほど、似ていなかった。




蜜柑はこれでリンとゆっくり話ができると、ひとり喜ぶのだった。






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