▽初等部・男女主X


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琥珀の初手、リンへのあいさつはやはり、明らかに失敗だったようだ。




あれから明らかにリンは琥珀を怪しがり、避け始めた。

いくら琥珀が話しかけても、リンは無視するか、最低限の一言を返すだけだった。

無理もない。

蜜柑にはその気持ちがよーくわかった。

学園にいた時の2人を見れば、突拍子のなさはおいといて納得はできるものの、

大前提として、今、リンに学園のころの記憶はない。

梓からも、学園以前のことを話してもほとんど記憶は戻らなかったときいていた。

そして、琥珀がリンの手に触れたその時も、リンは思い出したようすはなかった。

そこだけは蜜柑はわずかに期待したが、それ以降のリンの琥珀を避ける態度は、しごく当たり前すぎて、そんな望みもなくなった。




最初は落ち込んでいるように見えた琥珀。

しかし、昼休憩をはさむと、その気持ちを持ちなおしているようにみえた。

どうしたんだろう、と思うも5限目の授業が体育だということに蜜柑は納得する。

琥珀の考えていることだ、運動神経のよさでリンの気を引こうという魂胆だった。




そして案の定、午後の体育で琥珀は大活躍。

サッカーで、現役サッカー部をしのぎ、次々と得点を決めるのだから女子たちの目は釘付けだった。

棗も、熱の入る琥珀のようすにウンザリだった。

自分を目立たせるため、棗にアシストをさせ任務並みに走り回る琥珀に棗は振り回されるのだった。

実際、今のところ琥珀の動きに合わせてパスできるのは棗しかいない。




「琥珀くん、おつかれサマっ」

「かっこよかったよーっ」

「棗くんもーっ!」

「2人ともサッカー経験者?」




女子たちがキャッキャ言う中、蜜柑は取り残されていた。

やっぱり2人は違うなあ、と思っていた。

そんな蜜柑の気持ちに気づいてか、棗は「蜜柑、タオル」とぶっきらぼうに言う。

「あ、うん」と、蜜柑は嬉しそうに棗に寄った。




「え、棗くんと蜜柑ちゃんって付き合ってるのー?」

「すごく仲良さそう」

「じゃあみんな琥珀くん狙いになるね」




そんな、女子たちの会話がきこえた。

棗は何も、気に留める様子はなかった。




そんな中、きこえてきた気になる会話があった。

「リンちゃんって、クールだよね」

「クラスにイケメンが2人も転校してきたっていうのに」

リンは、騒ぎ立てる女子とは離れたところにいて、ミーハーの女子たちの言う通り、興味なさげだった。

琥珀の作戦はまたも、狙いが外れたらしい。

「まあ、リンちゃんらしいけどね。

それとほら、リンちゃんといえば、“栗原くん”じゃん?」

「え、栗原くんって?」

「知らないのー?

栗原 楓(クリハラ カエデ)くん。

リンちゃんと付き合ってるって噂だよ」

「そうなの?知らなかった!

彼氏いいなぁーーっ」





この会話を、動物の超音波まで知覚できる、超聴覚の琥珀が聞き逃すはずもなく。

目つきは変わる。



栗原 楓___...



また別の不安が、蜜柑を襲うのは言うまでもなかった。





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