▽初等部・男女主X


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きゃーーー!!!



音校生の宿泊施設内、響く悲鳴。

向き合っていた星と遠麻ははっとする。

急に、廊下が騒がしくなった。




「どうやってホテルに入り込んだのかしらっ」

「誰か捕まえてーーーっ」

「コラ―待てーーーっ喋る犬ーーーっ」




その近づいてくる声に、ぴんとくる2人。

それから角をものすごいスピードで走ってくる小さな姿をみて、確信した。



「あ、アルマさん?!

なんでここにっ」



しかしアルマはそんな星に応えるより先に、勢いよく星の服の中へもぐりこんだ。

その直後、犬を追いかける生徒たちが濁流のように過ぎ去っていくのだった。



「アルマさん何してるんですかこんなところでっ

ここ男子禁制ですよっ」

遠麻のいる前で元も子もないことを言っていることに、星は動揺しすぎて気づいていなかった。

「あの後お前がどうなったか気になってきてやったんだ!」

首根っこを星につかまれながらも、アルマはギャンギャン騒ぎ立てる。

「あっそうです!

アルマさんに話したいことがあったんです!」

思い出したように言う星。

「報告と...あと今すごく悩んでいることがあって...」

そこまで言って、あっと星は遠麻のほうをみる。

遠麻は、くるりと向きを変え、歩き始めていた。

様子が、おかしいと思った。

やっぱりあの時、何か気持ちをのみこんだまま...

「遠麻さま、どちらに...」

「部屋に戻ります」

静かな声だった。

「...トーマ?」

アルマも何か、感づいたようだった。

くるりと振り返る遠麻は、いつもの表情にみえたけど...

「気分が優れないので失礼します」

淡々とした言葉、微妙な声色がやっぱり...いつもと違う...

そう、星が遠麻を気にかけ、一瞬気がそれた瞬間だった。

しっかり捕まえていたはずのアルマが、手からするりと抜け、遠麻のほうへ向かう。



ガウッ...ウ゛ぅ..



うなり声とともに、さっきまでとは目つきがかわっていた。

遠麻も突然のことに、はっとした、その時だった。




べちっ




と何か叩き落とす音と共に、どさっと床に落ちる音。

みると、足元に頭を抱えたアルマがうずくまっていた。

クゥウウ

と仔犬のような鳴き声をあげるアルマ。

「す...すみません」

と気まずそうな星。

咄嗟に遠麻を守らねばと手が出ていたのだった。

「おまえーっっ」

案の定、ギャンギャンなきわめくアルマ。

そして、最初に会った時より手なづけることを心得た星。

そんな2人の言いあい、じゃれ合いが、遠麻の目にはどこか楽しそうに映るのだった。

そして、星とアルマが気づいた時には、自分の部屋へと入っていく遠麻の後ろ姿しか見えなかった。






「アルマさんのせいですよーーーっ!!!」

遠麻がいなくなった途端、あれ絶対怒ってらっしゃいますよ!と叫ぶ星。

明らかに、遠麻の様子がおかしいのは今はもう一目瞭然のこと。

しかしアルマは「知らねーよお前のせいだろ?」と言ってのける。

それが無責任にきこえたが、どうも違うようだった。

「アイツ、イヤなことや引っかかることがあると

いつも喉まで上がった思いをぐっと呑み込んで、何も言わない代わりに笑うんだ」

あ...

その言葉に、思い当たる節があった。

あの時...やっぱり...

でも、なんで...?




「心閉ざしたりすねてるときの合図みたいなもんだよ。

アイツは今更俺が命狙おうと何しようと気にもしねーよ。

眼中にないってやつ、ムカつくけど」

アルマはぐーっとのびをしながらいう。

「だったら、お前に対してしか考えらんねーだろ。

王族だから思ってることが顔に出ないように躾けられてできら“クセ”みたいなもんだよ」




星は、その言葉に、ぼーっと考える。

遠麻さまが私に、何かおもうところが....?

私、自分のことで精一杯で、何も...

気が付かなかった...




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