▽初等部・男女主X


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「音校の校長先生って...」



蜜柑の言葉をきいて、何かひっかかるなと思って考えていた時、はたと思い出した。

たしか...



琥珀の方を向くと、目が合う。

「そうだよ」と頷く琥珀。

「僕の姉さんの結婚相手さ」



そこでつながった。

蜜柑もまた、八神家と五色家に縁があることを知って、当然五色家の一葉も八神家の結婚について知っているのだな、と納得した。



「ナル先生って言って、初等部のときの担任の先生やってん。

うち、最近学園に戻ったばかりだったから、ナル先生が結婚したのしらへんくて、

今日はお祝いを言いに...」

蜜柑は、紙袋をみせる。

なるほど、と一葉も頷いた。

そして、もうひとつの推測が確信に変わった瞬間だった。




ー最近学園に戻った...

2人が結婚したのは昨年なのに、蜜柑は知らなかった...




蜜柑は、あっと、自分が口を滑らせたことに今気づいたようだった。

「知らへんかったっていうのはな...」

えっと、と説明に困っている蜜柑。

流架も助け船を出そうとしている時だった。

「大丈夫です。

だいたいの事情は知ってます」

一葉の言葉に、え...、と蜜柑はつぶやく。

琥珀も、蜜柑と目を合わせ頷いた。

「当時その話題は、かなり大きなものだったで...

八神家の方々がご活躍されたこともあり、五色家にも伝わってます。

最初はわからなかったですが、話を聞いて結びつきました。

佐倉蜜柑さんですね。

そのアリスも功績も、その後のことも...お聞きしました。

大変でしたよね...」

哀れむように、一葉は眉じりを下げた。




最初、蜜柑は驚いたものの、東の八神家、西の五色家と呼ばれたとかなんとか流架に聞いたことを思い出し、納得した。

長年続いた久遠寺による学園の支配が解かれ、学園の変革のきっかけとなった騒動。

五色家が知っているのもなんらおかしくない。

五色家としても、久遠寺が邪魔というのは八神家との共通認識であったため、久遠寺が倒れたことに利があった。




「うち、そんな有名人やったんやな」

蜜柑は複雑そうな顔をした。

最近記憶を取り戻したばかりの蜜柑には、この生活、状況に慣れるにはもう少し時間がかかりそうだった。

「とても勇敢な行動だったと思います。

とても尊敬してます」

まっすぐと、一葉は言うのだった。




「行くぞ」



この空気を断ち切るように棗が言った。

気が付くと、もう音校の入口だった。

みんな気持ちを切り替え、それぞれの目的を胸に豪華なつくりの校舎を見上げた。




琥珀はそっと、中等部の姫宮らしいなと思うのだった。

志貴が理事長をつとめるここは、ほとんどが姫宮の出資によるものだときいている。

つくづくな趣味だな、と思いつつもなんともいえないあの雰囲気は苦手だったのであまり思い出さないようにした。




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