▽初等部・男女主X


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「どう?

うち、ちゃんと似合ってるんかなあ」




初めてその制服に身を包み、慣れないのかどこか恥ずかしそうな蜜柑。




「いいと思うよ、蜜柑。

すごく似合ってる。

棗もきっと、そう言うよ」




最後に会った12歳のあの時から5年の時を経て、改めて自分たちの成長を感じた。

当たり前なのだが、蜜柑はあの時より身長も伸びてずっとずっと大人っぽくなっていた。

5年前はトレードマークだったツインテールを、今はおろしている。

顔つきは、ますます柚香さんに似ているなと思った。

しかし、性格はあの頃と変わらず、明るく笑うその姿に安心した。




蜜柑は琥珀に褒められ、少し照れくさそうにしていた。

ブラウンのネクタイとブラウンチェックのスカート。

ブレザーに入ったラインも、ブラウン。

まさしく、アリス学園高等部生の制服だった。

この制服は、生徒たちの憧れでもあり、学園の真の生徒であると認められたような証でもあった。

初等部の頃、手の届かないはるかかなたの存在だった、櫻野や翡翠、静音たちと同じ制服を着ているなんて...

学園で過ごした記憶をつい最近思い出した蜜柑にとっては、まさかこの制服を着れるとは夢にも思っていなかった。




学園に、戻ってきたんだ...

制服に身を包み、やっと実感がわく。

目の前の琥珀はすっかりこの制服を着こなしていて、蜜柑は自分が浮かないかどうか心配だった。

5年前の琥珀も同い年の生徒に比べたら大人っぽかったけれど、今は身長もさらに伸びて、大人っぽさが増していた。

恋愛沙汰にうとい蜜柑でも、これはモテるんだろうなと思った。

その中でも、銀髪に青い瞳が、琥珀らしさであり変わらない部分でもあって、安心できた。





「おーい佐倉ーっ」

聞きなれた声がした。

流架が手を振り、こちらに向かってやってくる。

一緒にいる棗を見つけて、蜜柑の顔が緊張で固まっていた。

琥珀はくすくすと笑って、蜜柑の耳元で「大丈夫」と言って安心させた。

そして何やらコソコソと蜜柑に耳打ちした。

棗は思った通り、機嫌が悪そうに登場した。

蜜柑はなんで棗の機嫌が悪いのかわからず、自分が何かしたかと考える。




「佐倉、制服とっても似合ってるよ」




さすがるかぴょん。

きらきらの王子様スマイルでそれを言われて、嬉しくない女子なんていないだろう。

その言葉で、蜜柑の緊張はほどけた。




「ほんまに?

よかったぁ〜。

うち、似合ってるか心配しててん。

2人に見せる前に、琥珀に確認してもらって...」

それで一緒にいたのか、と流架は納得いったようだった。

しかし棗の顔がもっと険しくなるのは、気のせいではない。

蜜柑もさすがに察する。

蜜柑は小声で流架に問う。




「なぁ、棗どうしたん?

うち、なんかしたかなぁ」



「まさか」



流架は琥珀と目を合わせてクスクス笑った。



「きっと、佐倉の制服姿を1番にみれなくってスネてるんだよ。

ね、棗?」




えっ?

と驚いた顔をする蜜柑。

「余計なこというな」と、棗は図星をあてられたのか、居心地が悪そうだった。




「そ、そうやったんなら先いうてやぁ。

高等部の穴探しに行った時、一回みてるからいいと思って...」




その言葉に、ついに琥珀は吹き出した。

棗がそんな素直に言えるわけないだろ、と笑うのだった。

そんなことをしていると、案の定棗の炎が琥珀を襲う。

「うわぁっ」

と言いつつも、琥珀はすばやく鳥獣に変態して、空高く避難する。




喧嘩のレベルも、あがってる....?




懐かしい光景だな、と思いながらも、2人がアリスとしても成長していることがわかって感心した。



「2人とも、せっかく佐倉の学園復帰初日なんだから」




と、やっと流架の制止で2人は休戦するのだった。







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