▽初等部・男女主W


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「ーごめんね...月」



あの目が、あの目が忘れられなかった...




火傷でただれた醜い顔。

その目が見えなくなっても、その固い決意であの子を守った強い意志...





柚香ちゃん...

あの死に際の時、なぜ、最後の力をふりしぼって

私に声をかけたの...?

あんなにやさしいまなざしで...




幼いころ、同じ境遇に堕ちたと思っていたあなたたちが、

私とまったく違う道を歩み...

その手にいくつも愛を手にする姿を見るにつけ、

そんなあなたたちを、

いつしか憎み続けることが、私の生きる力になっていた...

アリスだとわかったその日から、

私はずっと、闇の中、ひとりぼっち...





いびつだとわかっていても、

最後に残ったこの光が、消えてしまうのが怖くて...

だから私は、あなたたちを憎んだ。

心の奥で間違っているとわかっていても、

憎むことが、

手の内の光を灯し続ける唯一の道だった。






「初校長...

何を企んでおいでですか....

Zとの和解の件といい、

柚香の...最期のことといい...

お願いです、初校長...これ以上...」

「ルナ」

ぴしゃりと遮るこの男に、もう何も言葉は届かないのだと、悟った。

「私たちは運命共同体...家族だ。

あの忌まわしき五十嵐 梓の、見苦しい末路はみたね。

ああなりたくなかったら、余計な詮索は無用。

君たちは何も心配しなくていい...」




最後にみた梓は、見苦しくなどなかった。

私もあんな風に、命がけで守るほどの大切なものがほしかった。

まっすぐに、誰かを愛することができたら...

梓のように強く生きられただろうか...





ああ、私はまた堕ちていく...





柚香ちゃん、私はあなたがうらやましかった...

あなたになって、みんなに愛されたかった...

あなたのまなざしが、あの最期の時だけでなく、ずっと昔から、

私に向けられてたことに、気づかなかった____






どこかの部屋で、ライブの中継が流れているのだろうか...

盛り上がる割れんばかりの歓声が、遠くで響いた。




始まる...

始まってしまう...





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