△初等部男女主 (続)
□招待状(3p)
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「ゆーきーちゃーん!!」
気持ちのいい朝、少女の声が清々しく響く。
その声がしてすぐ、家の中ではバタバタとせわしない音が聞こえた。
そして、ガラガラっと窓が開く。
「おはよう、さっちゃん!
今行くね!!」
黒いきれいな髪をなびかせた女の子が、元気よく顔を出した。
後ろから、「さっちゃん待たせないようにって、言ったでしょユキ」と母親の声がきこえ
ユキと呼ばれた少女は、やばい、とすぐに支度を整えた。
長い前髪をピンで留め、勢いよく赤いランドセルを背負う。
その反動で、風に乗って机の上にきれいに並べてあった銀の羽が1枚、はらりと落ちた。
ユキは、はっとしてドアに急いでいた足を引き返す。
そして丁寧にその羽を拾って、いつもの位置に戻す。
銀色の羽が8枚。
ユキの宝物だった。
不思議な色に光るそれを満足そうに見つめる。
「ゆーきーーっ」
リビングからの母の声に反応して、勢いよく部屋を出た。
玄関では、母がさっちゃんに「いつもごめんね」と話している。
急いで向かわなければいけないのだが、登校前の最後のルーティーンがあった。
リビングに寄り道し、窓際の明るい場所、そこにある鳥かごの中をのぞく。
真っ白な雪のようなフクロウがうとうとしていた。
もう、おじいちゃんの年齢だというそのフクロウに、活発さはない。
「あられ丸、いってきます」
ユキはびっくりさせないようにそっと言って、さっちゃんのもとへ急いだ___
「ユキちゃんのお母さんって、すごくきれいだよね。
うちの学校だと一番じゃない?」
学校へ向かう中、さっちゃんが言った。
ショートカットの似合う、運動神経抜群の明るい女の子だ。
「そうかな」と言いつつも、大好きな母を褒められて、ユキは嬉しかった。
黒髪に黒い瞳、透きとおるような白い肌。
この町で一番美人の、自慢の母。
「うちのお母さんよく言ってるよ。
ユキちゃんのお母さん、昔から美人だったって」
さっちゃんが言った。
ユキの母とさっちゃんの母は、昔からの仲だということは、2人もよく知ることだったし、
実際、親同士の仲がいいからこうして2人も仲良くなったのだ。
さっちゃんのお父さんも幼馴染らしく、夏はよくさっちゃんの家族とバーベキューをした。
「今日から6年生だね。
こうしてランドセル背負うのも、1年しかないのかあ」
ユキの言葉にさっちゃんは頷く。
「私たちも、お母さんたちみたいにずっと、仲良しでいたいね」
ユキは「あたりまえじゃん」と笑顔でこたえた。
桜が舞い散る季節。
少女たちの笑い声が、緑に囲まれた田舎町に気持ちよく響いていた。
少女たちは、自分たちの未来に希望を抱きながら、その軽い足取りで駆けていった____
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