▽初等部・男女主W


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「ったく、新年早々目立ちすぎなんだよお前」

悪戯っぽく、翼はいう。

「笑いごとじゃないよ、琥珀...」

心配そうな流架は気が気でなさそうだった。

棗は手を貸し、その上体を起き上がらせる。

あんなに凄まじい爆発の中心にいたのに、琥珀の身体中の傷はもう閉じかけていた。

「昔っから治りは早い方なんだよ」

ぶんぶん、と腕をふり、平気なことをみんなにアピールする。

「さすが八神家...」

殿も呆れてるのか安心しているのか、ため息をつくのだった。




「リン、大丈夫だから。

もうそんな顔しないで」

久しぶりの登場がこんなのでは、心配しないわけがない。

でも、琥珀が笑うから...

よかった...とつぶやいた。





「しっかし今のはきいたぜ、やっぱお前すげぇな、棗」

バキバキと関節を鳴らす琥珀。

しかしそう言われてもあの渾身の攻撃を受けて、こうもぴんぴんしていられると、自信もなくすもの。

「どんまい、あいつは基準にすんな」

そっと、殿は棗にフォローするのだった。





「棗の攻撃は確かにきいてる...

でもあと少しのところで逃げられた...」

僕がもう少し耐えられたら...と琥珀は悔しそうに顔を歪める。

「あんな中よくやったぜお前」

翼がいう。

「すぐに追わないと、回復される。

動ける人は、一緒に...っ」

琥珀の言葉に、皆頷いた。




「兄さんは?」

琥珀の瞳に頷く翡翠。

「僕は佐倉さんのことが心配だから、様子をみがてら情報収集してくる。

追い詰められた初校長が今、何をするかわからない。

念のため...」

翡翠の言葉に頷く琥珀は棗に向き直る。

「棗は、どうする?」

わかってる。

琥珀は、蜜柑のもとへ行くかきいているのだ。

しかし、棗は首を振る。

「あいつを叩くまたとないチャンス。

きっと最初で最後だ。

俺はこの機を逃したくない...っ」

棗の強い瞳に、わかったと、琥珀はこたえた。





「野田先生、タイムトリップで他の生徒たちを時空間へ避難させてください」

翡翠の申し出に、頷く野田。

ここで決着をつけるために、別れる。

それが今の最前手だった。

なるべく、関係のない生徒は巻き込みたくなかった。

「私も行く」

リンの強い瞳が、琥珀をとらえた。

「リン...」

安全なところにいてほしい。

そう思った。

「私も戦いたい。

私も、戦える。

蜜柑に入れてもらった力がまだある」

こういう戦いに慣れているリンは、大きな戦力だった。

それは紛れもない事実だったから...

「わかった。

でも、前線で戦うのは八神家の僕だ。

リンはあくまでも援護、僕の前にでないこと」

「うん、わかった」

黒くなったリンの瞳も、紅い時と変わらず、戦士の目をしていた。





「死なないって、約束して」

そう言って棗の腕をぐっと握るのは蛍。

強いまなざしで、その瞳を見た。

「死ぬ覚悟より、

生きる覚悟で、初校長に向かって。

それをちゃんと蜜柑に誓って...

蜜柑を、助けて」

ゆるぎないその瞳の強さに、また、覚悟が決まる。




「わかった、約束する」




はっきりと、棗は言った____





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