▽初等部・男女主W


□90
5ページ/5ページ



空気は一変し、騒然となる。




「殺すな。

協力者を吐かせる」

冷静な初校長の声。

鳴海は、Zのボスによってその身を拘束されていた。

教師たちもまた、生徒への被害を危惧する。





そんな中、前に出たのは一人の生徒だった。

「初校長」

そう呼ばれ、その人物を確認し、顔が険しくなる。

「大勢の生徒の前で飛び道具を使うなど、やりすぎです」

臆さず、冷静な口調を保つ。

翡翠だった。




「それにこんな危険な事態になるであろうことを予測し、

生徒を囮に使うなんてもってのほか」

静かに五島のそばにいき、アリスを施す。

きれいな虹色の粉が患部へやさしく降り注いだ。

「せんぱ...っ」

五島が苦しそうに目で訴えかける。

「もういい、五島。

僕は今でも君を信頼してるから...

もう、大丈夫だから...」

そう、やさしく声をかけた。





「しらじらしい。

どうせお前も、鳴海とその黒幕と手を組んでいるのだろう。

もし本当に、八神家として正義のヒーローを気取りたいのなら、

鳴海をテロ犯として捕まえろ。

それがお前たち一族の役目だろ?」

吐き捨てるように、初校長は言う。




「何が正義かは、私が決める。

二度はいいません。

今すぐ、鳴海先生を離してください」

翡翠の声に、生徒が騒ぎ始めていた。

こいつの声は、癇に障る。

フェロモンの類ではないのにもかかわらず、どうにも人の心に作用し、揺らがせ、

核の部分をゆさぶられる。

気が付けば支配されたような気分に襲われ、吐き気すらする。

だから八神家は嫌いなのだ。

でも、今お前ひとりで何ができるというのだ。

お前ができるのは偉そうなその態度だけ。

この状況を覆すような芸当、できるものならやってみろ...

どうせ口先だけで策などないのだ...

八神家は今、私がすべて学園から遠ざけ...っ





妙な、気配がした。

よくわからないが、それはものすごく凄まじい速さと、殺気で...

翡翠をみると、その表情は不気味なほど、余裕の笑みをたたえていた。

「貴様...っ

何を...!」

初校長の顔が、歪んだ瞬間だった。






ドンッ




バリバリバリバリッ



ガシャーーーンッ







凄まじい音。

雷鳴のような閃光と共に、天井が揺れ、それが床に伝わった。

その衝撃と同時に天井が割れ、突き破ってまっすぐ落下してくるもの...




まさしく、稲妻が降ってきたのだと、皆、そう思った。







正体は銀色の大きな鳥。



光る羽を立派に羽ばたかせる鳥獣。



何メートルものその身体を使い、その体重を一心にかけ、その鉤爪が捕えて離さないもの。




青い獣の目が捕えた獲物は...

苦しみに歪む、初校長...

倒れ、床に押さえつけられたその首元にしっかりと、大きな禍々しい爪が食い込んでいた。





「琥珀...!」







.


次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ