▽初等部・男女主W


□90
4ページ/5ページ



「...学園中のみんな...

しばらくの間、フェロモンを使わずに私が今から話すことに

どうか耳を傾けてほしい」

鳴海が静かに語りだす。

ざわついていた生徒たちも、雰囲気がかわったことで、静まり始める。





「私は今まで、君たちにとって、

いい教師では決してなかった」




いつもの鳴海の口調だった。

棗もリンも、安心感からか身体の力がぬける。




「長い間、ただ見て見ぬふりをし続けてきたこと、

どうか謝罪させてほしい...」




画面越しにみる梓にも、響くものがあった。




「そんな私を変えてくれたのは、一人の女性...

そして多くの同胞の死...

何より、多くの悲しみを抱えてもなお、

強い瞳で...

犠牲をいとわなかった一人の少女...」




蜜柑も、迷宮棟でその中継をみているところだった。




「もう遅すぎたのかもしれない...

でも、それでも私は君たちを守りたい。

これ以上、学園に、君たちを取り巻く大人たちに、

絶望してほしくない...

どんなに殺伐とした環境であっても、君たちは一人ひとりちゃんと、

誰かのあたたかい想いにくるまれている。

それを忘れて生きていくことが、

どんなにむなしく愚かしいかを、

これまでの私の姿と共に、心に焼きつけてほしい...」




梓はゆっくりと深呼吸をした。

鳴海がすべて、代弁してくれた....

私の想いに限らず、瑠璃の想いもまた...

皐月は、静かにその背中を見つめた。





「私は決して許さない。

....生徒たちの人権を無視し、

多くの人の人生を奪い、

悪事に邁進し続けた初校長を....

この男がいる限り、悪の根はいつまでもはびこり続ける」



鳴海の手に力が入る。

初校長は、苦しさに顔を歪めた。



「誰かがそれを絶たねばならないなら、

私がやる...っ」



鳴海の瞳がまた、一段と暗く影を落とした、その時だった。





「ずいぶんと派手にやってくれたものだな」




予想もしなかったその声。

聞こえてきた場所...

はっとした時には遅かった。



「残念だったな...」




バタッ



とその場に倒れ、毒牙に苦しむのは、初校長ではなく、

初校長に扮した、五島だった。




皆、騙された。

そして、油断した。




バシュッ...バシュッバシュッバシュッ...




その機を逃すまいと立て続けに鳴り響いた銃声。

それは鳴海を捉え、その場に倒れた___






.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ