▽初等部・男女主W
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年明け早々、毛利レオによる、学園主催のニューイヤ−ライブが決まった。
毛利レオといえば、昨年に棗やリン、蜜柑、正田スミレを誘拐した犯罪者であり、
Zの一員であることはすでに学園関係者の一部には知れていた。
しかし堂々と彼らを招き入れた初校長の算段...
大いに警戒に当たる必要があるが、それをこえることを何かたくらんでいるのは、間違いなかった。
生徒たちにはライブと知らされ、学園関係者には学園の平和のための“交渉”も兼ねると公表されては、
中校長サイドはヘタな動きができなかった。
初等部生たちも、特に蛍を中心に、
その不穏な動きを敏感に察知し、対策をたてねばと、団結していた。
そんな中、リンがひとり、情報収集役を買って出る。
体内に複数のアリスをもつリン。
その中にあるのは、梓の記憶操作のアリスも例外ではなかった。
他にも偵察に向いているアリスを多数保持していた。
組織での経験もある。
自分以外に適任はいないと、リンは確信していた。
リンの過去をみた蛍もまた、彼女を信じようと、バックアップすることを心に決めていた。
「あいつらの思い通りにはさせない」
その確固たる意志は皆、同じだった。
そして来たる時。
正門には何も知らないレオファンの生徒たちが多数出待ち。
これから起こることも知らずに、妙な熱気に沸いていた。
リンはそのすきに、レオの控室のある本部に潜入する。
五感を研ぎ澄ませ身をひそめることは、組織を出て2年経った今でも、身体に嫌なくらい染み付いていた。
わずかな気配や音、変化に気を配り、自身から出る音や気配までも無にする。
心臓や血液の流れまでも、すべて自分の統制のもとにおく。
そんな中、飛び込んできた思いもよらぬ情報...
蛍のつくったキノコ型多機能イヤフォンを通して、それは棗や流架にもきこえる。
ーZが初校長を暗殺...
ー学園を崩壊させるシナリオ...
聞いたとき、リンと棗は同じことを思ってしまった。
これだ...
これしかない、と...
「蜜柑を救うためには、初校長を倒すしかない」
「棗...っ」
流架は嫌な予感が当たらぬようにと願う。
そんなこと....
そんなこと....っ
誰かがやらなきゃいけないなら、
私が...
俺が...
この状況を利用できるなら好都合...
何度もこの手を、組織で汚してきた...
今さら、何のためらいもない。
どうせこうなるなら、あの時、死んでもあいつの息の根をとめるべきだった....
どんな汚名をかぶせられても...
この学園を、みんなの居場所を、蜜柑の笑顔を守るためなら...
私は...っ
しかし、黒い感情に呑み込まれそうになった時、ふとよぎるあの青い瞳。
ーリンに刀は抜かせないから...
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