▽初等部・男女主W


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ー流架...


 流架...


 棗を...棗の...そばに...






「琥珀?!

...いや、あられ丸??」




その、雪に溶け込むような白い姿...


動物フェロモンもあるが、流架の中に入った、八獣のアリスから直接、

その心に語り掛けるようだった。




あられ丸が飛んだ先、そこで見つけた姿に、

あっと声をあげる。

相手も、驚いているようだった。




「流架...」

どうしてここに、と棗。

「琥珀に...あられ丸についてきたら...

棗がいた...」

バサバサバサっと羽音をたて、2人のまわりを飛び、静かに近くの木にとまり、その真ん丸の目で、見守る。




その時だった。





ゴホゴホゴホッ





棗が激しく咳き込む。

流架ははっとして、その背中をさすった。

そして棗がぎゅっと握って隠した手...

口を押えていたその手に、紅い血が見えたから...




「もういいよ、棗...」

寂しそうな、流架の声が小さく響く。

「もうわかってるよ...

棗がずっと、なんともなくないことくらい...」

はっと、その目をみつめる棗。

「もう、俺たちには隠さないで」

流架のその瞳に、棗の瞳もまた揺れる。

「棗、わかってほしい」

流架はやさしく語りかける。

「一緒にいるのに、いつも棗は1人で...

重い荷物を背負おうとしてる...

その荷物を、少しでも手助けしたいのに...

そばで...

棗の傷つく姿をただ見てるしかできず、

何もしてあげることがっできない。

それが何よりつらいんだ....」

絞り出すような流架の声。

うるむ瞳。

「棗が...親友がつらい時の、一番の支えになりたい...」

そっと流架は棗の手をとる。

その奥に見えたあられ丸の目が...あの琥珀の青い瞳に重なった。





「今も昔もずっと...

棗は問いかけてきたよね、目で...

そのたびに俺は強く、何度も心の中でこたえてた。

...棗と出会って、

この学園に一緒に来たこと、

一度だって後悔したことはないよ」

その言葉に救われる。

流架...

多分、お前が思ってるよりもずっとずっと、その言葉が心にしみて...

だから、心のうちを全部さらけだす。

自分の弱いところすべて...




「ルカ...

本当はこわい」





棗の初めて見る、こんな弱弱しい姿。

流架は必死にその手をぎゅっと握った。

大丈夫、大丈夫だよ。

僕がここにいるから____






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