▽初等部・男女主W


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気が付けば、琥珀の腕は銀色の体毛で覆われていた。

「こっちのほうがあったかいでしょ」

とやさしく言う琥珀に頷き、その腕に顔をうずめた。

言う通り、とてもあたたかかった。

そして、琥珀を近くに感じられて、嬉しかった。

ずっとずっと、こうしたかったから...





「今までどこに...」

震えるリンの声。

「ごめん。

ほんとはもっと早く、リンのところへ行きたかったんだけど...」

「不安、だった...

“紅蛇”じゃない私に、琥珀はもう、興味がないんじゃないかって...」

あの時、あの銀の首輪を外してくれた瞬間、そう思ってしまった。

これで、琥珀は私のそばにいる理由がなくなってしまった...と。




「そんなこと...っ

絶対にない!!」




琥珀の声が一段と大きくなる。

「そんなこと、思ってたなんて...

もっと早く、会いに来るべきだった...」

心底後悔して、琥珀は言う。

抱きしめる腕にも、力が入った。

「リン、僕の目を見てほしい...」

ふっと力をゆるめる琥珀。

リンはそっと、後ろを向いた。

その青い瞳と目が合う。

やっぱりきれいだと、思った。




「確かに、僕たちの出会いは普通じゃなかった。

僕が君に最初に惹かれた理由も...

君の戦いが美しかったから...

そこから気になって、初めて戦ったあの時のワクワク感は今でも鮮明に覚えてる」

リンもまた、思い出していた。

刀の擦れる音。

血の匂い、獣のうなり声、青い瞳越しにみた月が、きれいだったこと....

「初めて君の瞳をみた時、素直に美しいと思った。

それは、今も変わらない。

君の瞳に、僕だけを映してほしいと思ってる。

こうして2人でいるときは、僕だけに夢中になって、僕だけのことを考えてほしい。

それくらいに、君が好きだ。

愛してる。

こうしていると、君だけに夢中で、君だけのことしか考えられない。

理屈じゃないんだ...」

瞳の美しさに惹かれたのは、自分も同じだった。

「私も...

琥珀がいると、琥珀のことしか考えられない。

私は、琥珀にずっと、夢中だよ。

好きだよ、琥珀...」





リンはそう言って、琥珀の唇にキスをした。

リンからは、初めてだった。

そのことに琥珀は少しびっくりしたけど、ゆっくりと、そのキスに応えた。

甘くて、冷たくて...でも、だんだんと熱くなっていく...

ずっとこうして、触れ合って、体温を交換し合って、ふと目が合って、照れくさそうに笑って...

幸せな時間が、続けばいいなと、思った。






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