▽初等部・男女主W


□88
2ページ/5ページ



賑わうダンスパーティー会場。

リンは外のテラスにいた。

中とは違い、静かで寒かった。

漏れ出る光を頼りに、2つ折りのそのカードをひらいて読む。

すぐに目に入った字は、その瞬間に誰のものかわかった。

途端に涙が溢れだす。

視界がぼやけた。

身体が震えた。

でも、しっかり読まなくては、と。

一文字一文字、その文字を追った。





リン


メリー・クリスマス

そして、遅くなったけど

誕生日おめでとう

あなたが生まれた日のことは

今でも鮮明に思い出す

リンは、

私と、あなたの母の希望だった

生まれてきてくれて

ありがとう

どこにいても、あなたの幸せを

願ってる



Ⅿ  





最後の“Ⅿ”のサインは、間違いなく、あの人の文字だった。

12月5日は、リンの誕生日だった。

そして、2年前の今日は、ちょうどあの日。

組織が殲滅され、梓と離れ離れになった日だ。

去年は考えられなかったけど、梓との再会を果たして、知りたかったことも知ることができた。

梓の苦しみも、罪も、想いも、すべて理解した今。

あの時、すぐには頭が追い付かなかったけど、

今なら、わかる...

私は時間が経った今も、梓のことをちっとも恨んでない。

それよりも、ただただ会いたかった。

会いたい、会いたい...

会って、たくさん話したい。

お母さんの話を、たくさんしてほしい。

もっともっと、思い出話をしてほしい。

梓が苦しんだ時間も共有したい。

梓は、私にとって、家族以上の存在なのだから...




アリスのない私。

みんな、変わらず接してくれる。

アリスがあるとかないとか、関係ないんだ。

あってもなくても、入れられても、奪われても、変わらず梓が大切だ。

私たちの絆はそんなことでは切れない。

数か月考えて、やっぱりそうだと、確信した。

その想いを、早く、早く、梓に伝えたい。

梓、今、どこにいるの...?

また、会えるよね...?

会って、ありがとうを伝えたい。

会いたい、会いたいよ...





リンは涙でにじんだカードを握りしめ、うずくまって、泣いた。




キュッ



と雪を踏みしめる音。

背後のその足音。

雰囲気。

すべてで、わかった。





「探したよ..リン」

優しく響く声は、前より少し低く感じた。

後ろから、ぎゅっと抱きしめられる。

熱く、身体が火照った____





.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ