▽初等部・男女主W
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賑わうダンスパーティー会場。
リンは外のテラスにいた。
中とは違い、静かで寒かった。
漏れ出る光を頼りに、2つ折りのそのカードをひらいて読む。
すぐに目に入った字は、その瞬間に誰のものかわかった。
途端に涙が溢れだす。
視界がぼやけた。
身体が震えた。
でも、しっかり読まなくては、と。
一文字一文字、その文字を追った。
リン
メリー・クリスマス
そして、遅くなったけど
誕生日おめでとう
あなたが生まれた日のことは
今でも鮮明に思い出す
リンは、
私と、あなたの母の希望だった
生まれてきてくれて
ありがとう
どこにいても、あなたの幸せを
願ってる
Ⅿ
最後の“Ⅿ”のサインは、間違いなく、あの人の文字だった。
12月5日は、リンの誕生日だった。
そして、2年前の今日は、ちょうどあの日。
組織が殲滅され、梓と離れ離れになった日だ。
去年は考えられなかったけど、梓との再会を果たして、知りたかったことも知ることができた。
梓の苦しみも、罪も、想いも、すべて理解した今。
あの時、すぐには頭が追い付かなかったけど、
今なら、わかる...
私は時間が経った今も、梓のことをちっとも恨んでない。
それよりも、ただただ会いたかった。
会いたい、会いたい...
会って、たくさん話したい。
お母さんの話を、たくさんしてほしい。
もっともっと、思い出話をしてほしい。
梓が苦しんだ時間も共有したい。
梓は、私にとって、家族以上の存在なのだから...
アリスのない私。
みんな、変わらず接してくれる。
アリスがあるとかないとか、関係ないんだ。
あってもなくても、入れられても、奪われても、変わらず梓が大切だ。
私たちの絆はそんなことでは切れない。
数か月考えて、やっぱりそうだと、確信した。
その想いを、早く、早く、梓に伝えたい。
梓、今、どこにいるの...?
また、会えるよね...?
会って、ありがとうを伝えたい。
会いたい、会いたいよ...
リンは涙でにじんだカードを握りしめ、うずくまって、泣いた。
キュッ
と雪を踏みしめる音。
背後のその足音。
雰囲気。
すべてで、わかった。
「探したよ..リン」
優しく響く声は、前より少し低く感じた。
後ろから、ぎゅっと抱きしめられる。
熱く、身体が火照った____
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