▽初等部・男女主W


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事件から数か月たったアリス学園。

季節は冬となり、雪が舞う。






久しぶりの明るい話題に、初等部は沸いていた。






「みんな!

リンちゃんが戻ってきたよ!」

「ほんとだ!リンちゃんだ!」

「久しぶりだね」

「会いたかったよ」

「おかえり!

リンちゃん!」

「体調大丈夫?

嫌なことされていない?」





みんな、心配そうに、でもどこか安堵した表情で....

そして何よりも、喜んでいるのが伝わった。





「わぁ、リンちゃんの目、色が変わったんだね」

「ばっか、今それ言うなよ」





事情はある程度、知られているらしい。

リンにとってそれは、楽だった。





「大丈夫だよ」

みんなに囲まれる中、リンはいう。

どことなく、雰囲気がやさしくなったような気がした。

それは、瞳が紅から黒へと変わったからだろうか...

いや、それ以外にも、リンの心境に変化があったのだろう。

蛍や棗は、リンを見守る。






「知ってると思うけど、私の中に、もうアリスはないの」

リンのもっていたアリスが、人工的に付与されたアリス、ということは限られた人しか知らない。

あくまでも、公にはアリスを使いきったということになるらしい。




「じゃあ、リンちゃんいなくなるの...?」

寂しそうなクラスメイト。

リンは頷いた。

それにまた、みんな目に涙を溜める。




「でもすぐじゃない。

今、私の中には“入れるアリス”で複数アリスが入ってるから、

学園の退出は見送りになってる」

柚香と蜜柑が残してくれたものだった。

その言葉に、またみんなの顔がぱっと明るくなる。

「そうなの!またリンちゃんといられるね」

嬉しそうに、みんな言葉をかけてくれる。





「中等部にみんなで一緒に進級したら、琥珀くんも喜ぶね」

琥珀の名に、一瞬リンの表情は固まるも、またすぐに元通りになる。

「うん、みんなと進級できたらいいな...蜜柑も」

蜜柑の名に、みんなはしみじみと頷き、そうだね、と言った。





私に正式にアリスがないとわかると、初校長が見限り切り捨てるのはすぐだった。

“イメージを具現化するアリス”という、稀有なアリスのない私は、初校長の興味の範疇からなくなった。

私を拘束しておく理由はなくなったのだ。

結果的に、梓の思惑通りになっていた。




代わりに初校長はその目を一心に、蜜柑...いや、蜜柑の持つ、“盗みのアリス”へと向けていた。

そんな蜜柑が心配だった。





蜜柑、元気だろうか...

私だけ先に...解放された。

この運命をまっとうするわけでもなく、早々に途中退場しようとしている。

今の私に、何かできることはないのだろうか____





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