▽初等部・男女主U
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あれだけセキュリティの高いときいていた高等部。
そこに案外楽に入れたのことに、みんな驚いていた。
「案外ちょろいな、高等部...」
翼はのんきにそんなことを言う。
「まあそれも全部、こいつのおかげだよ」
殿内は翡翠の姿をした琥珀を示す。
校門を抜けるのは、翡翠の顔パスだった。
「高等部学生、7名ですね。
では身分証の提示を」
警備の人のその一言に、殿内は自分のものをだすが、他はもっているはずもなく、琥珀以外は冷や冷やしていた。
しかし、琥珀は冷静だった。
「僕、必要かな?」
いざとなれば、琥珀は声もその口調も真似できるのかとみんな感心する。
「いえ、翡翠様はどうぞお通りください。
後ろのご友人の方は、提示をお願いします」
やっぱり...どうしよう...
みんなそう思っていたが、琥珀は続ける。
「すみません。
僕たち急いでいて。
すぐに通りたいんだけど、今回は見逃してくれないかな。
僕の友だちだから何もないと思うんだけど、もし万が一のときは、僕が責任をもつから」
いやいやそんなんで通れたら誰も困らな...
「...翡翠様がそうおっしゃるのであれば承知しました。
翡翠様のご友人なら問題ないでしょう。
どうぞお通りください」
通れるんかい!!
どうなってるんだこの警備...いや、今のは警備の問題じゃない...おそるべし、八神家の力。
「ありがとう」
翡翠のあの笑顔を浮かべ、琥珀は校門を通過。
第一関門突破だった。
我ながら、翡翠を完全にコピーできてしまうのが腑に落ちなかった。
あんな正反対で、気に食わない兄なんか...
「まあでも、あれは八神家の力もあるけど、翡翠の人望でもあるな。
あいつ、学園にきて今の今までなんの不祥事を犯さないことはおろか、成績も常に優秀、素行も素直、穏やか、平和主義で、優等生の鏡なんだよ」
殿内の言う通りだった。
琥珀でも度々目立つ行為で話題に上がる中、翡翠は目立たないといえばそれまでだが、常に波風立てぬ学園生活を過ごしていた。
それは、周りの空気を呼んでただひたすらに自分の個性を消して潜むものとは違い、ただ、自然体に過ごしてそうなのだから、翡翠はみんなに好かれていた。
八神家という大きな名前をもち、恨みを買われてもおかしくない立場であるにもかかわらず、翡翠の悪い噂は聞いたことがなかった。
翡翠は周りからの信頼を地味にコツコツと築き上げていた。
いや、築くという自覚すらもしかするとないのかもしれない。
そんな翡翠の性格に、今日ばかりは感謝せざるを得ない、琥珀。
「校門じゃない入り口もあるけど、あっちはあっちで石像創りのアリスが制作した石像があって、防犯対策が厳しいからな...
てなわけで、到着」
殿内は高等部校舎前に立ち言った。
「わ――…っ」
蜜柑は、初等部とその規模の違いに感嘆の声をあげる。
「こっから先は当然人も多い。
無事穴を見つけたかったら、ごまかしきかねー派手な行動は御法度だ」
殿内はそう釘をさすのだった。
「....はいっ」
蜜柑は胸を高鳴らせる。
いざ、高等部潜入_____
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