▽初等部・男女主W


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天井が突き破られたのと同時に、会場中は今までにない大混乱に見舞われる。

志貴の結界のおかげである程度会場の形は保っているものの、いつ崩れてもおかしくない。

教師たちは、一斉に生徒たちの避難を開始する。





ステージの真ん中では、キーーンとした高い声でうなり声をあげ、

その大きな翼を羽ばたかせ獰猛な鳥獣が暴れる地獄絵図。

鳥獣は、初校長に張られた結界と必死に戦っているようだった。

凄まじい電流が流れているにも関わらず、その爪は初校長の首を、決して離そうとしなかった。

ステージ上で初校長を掴んだままもだえ暴れる鳥獣に、誰も近づけないでいた。

近づいたら、その強い力に巻き込まれかねない。

そんな中、鳥獣はある姿を見つけ、一点を凝視する。




ー棗...!

僕ごとヤれ....!!!




鳥獣と目のあった棗。

その目は、琥珀と同じくらい、殺気に満ちていた。

言葉はわからなくても、目と目でわかり合った。

リンは琥珀の石をもっていたため、その言葉がわかってはっとする。

その時にはもう、棗は煌々と燃え盛る炎を手に、一直線に向かっていた。





「ば...化け物...っ」




悲鳴は鳴りやまず、生徒たちが口々にそう言った。





「琥珀!

棗くん...っ

そいつを逃がすな...っ!!!」





翡翠の声が響く。

それと爆発は、ほぼ同時だった。





ドゴッ




鈍い、地響きのような音がして、紅い炎が燃え盛る。

銀色の化け物が、その中で耳をつんざくようなうなり声をあげる。

まるで、地獄をみているような風景だった。





「琥珀...!!」



「棗...っ!!」




2人に近づくことができたのは、炎と煙がやんでから。

息を切らし、呆然と立ち尽くす棗と、横たわる銀色の鳥。




「テレポートで、間一髪逃げられた...っ」



状況を察した誰かが言う。




「とりあえず、けが人の手当てを!

早く!!」



「琥珀!!

琥珀!!」

リンがその身をゆすると、徐々に変態がとけてゆく。

うっと声をもらし、横たわる向きを変えた琥珀。

棗もまた、心配そうにその顔を覗き込んでいた。



「琥珀、大丈夫...?」

翡翠が改めて問うと、琥珀は息を吐きだし、笑った。




「派手な登場、どうだった?」




いつも通りの琥珀にみんな、一斉に安堵のため息をつくのだった。





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