▽初等部・男女主W


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「本当はこわい...

1年先の未来を考えることも...

この心臓が、いつまでちゃんと動いているのか、

そんな風に鼓動を確かめる瞬間を...」




それが、どんなにつらいことだろうか...

自分の命の期限を悟ることのつらさ...

きっとそれは、棗にしかわからない苦しみで...




「でも何より、蜜柑を守れなくなる自分になってしまう。

その時が来ることが、こわい...」

棗の視線が落ちる。

想像した暗い未来にとてもじゃないが、耐えられない。

「...今すぐにでも、叶うなら...

命を縮めるとしても、あいつを、あの闇から連れ出したい」

棗の声がわずかに震えた。

「...けど、どうしても...

捨てきれない自分がいる...

未来を...

あいつとずっと一緒に生きていく未来を...」

いつだって、こんな暗い闇の中、思い出すのはあの、太陽のように照らす、蜜柑の明るさ、その笑顔...




「あいつの悲しむ顔だけは、

もう、見たくない...」




棗の代わりに、痛みを分かち合うように、流架の瞳から涙がこぼれ落ちる。





「ルカ...頼みがある」

そう言って、流架の目を見つめ、その先のあられ丸にも目を合わせた。




「近いうちにもしも、俺の身に何か起こることがあれば...

その時は蜜柑を...頼む...」




棗の目は、覚悟を決めた目だった。

その瞳に、どうしようもなく心がゆさぶられる。




どういうこと?

棗...

何を、考えているの...?





心がざわざわと、騒ぎ出す。




棗...

戻ってきて...

いかないで...





あられ丸がバサっと音をたて、飛び去った。








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