▽初等部・男女主W


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「君の学園生活の復帰が決まった」

え...と顔をあげるリン。

急なことだった。

「アリスを失ったといえど、君は、すべてのアリスと相性のいい特殊体質がある。

正式には準アリス扱いとなるが、柚香と蜜柑によって入れられたアリスの総量は

他のアリスとなんら変わりはない。

それに、この件にも、裏の仕事にも君は関わりすぎた。

非アリスとして今外に出ることは、君にとって危険であるという結論に落ち着いた。

しばらくの処遇は保留ということで...

学園生活に戻るように」

志貴の言葉にひとまず納得し、頷く。

「ここまで時間がかかってしまってすまない」

とんでもないです、とリン。

「数々の配慮、ありがとうございます」

言って、頭を下げる。

「君は未成年として、保護されるべき対象である。

そう、法で定められている。

君がいままでしてきたことに関して、罪の意識を感じ、自分を責める気持ちもわかる。

しかし、そうであるならば、君はもう、十分すぎるほどその罰受けた」

静かな瞳の中に、あたたかさを感じた。

こんなふうに言って、公正に守ってくれる大人は今までいなかったから...

そう言ってもらえて、救われるような気持ちになる。

「もう、自分を責めなくていい。

背負わなくていい。

これからはただまっすぐに、健やかに成長し、学を身に着けていくことを願う。

この学園を担う一人として、そう思っている。

君は隣にいるクラスメイトや友だちと同じような幸せを望んでいいんだ。

それを成しえなかった、五十嵐 梓も、そうなることをきっと願っている。

君は、そういう願いや希望を一心に受けて、どうか、明るい方向へ歩んでいってほしい。

時間はかかるかもしれない。

それでもこの学園が、君や他の生徒たちの心を育む場所となることを願って、私はこの学園をよくするよう尽力する。

約束しよう」

志貴さんの言葉は静かに、心地よく心に響いた。

ずっと欲しかった言葉を、くれたのだ。

ここにいていいと、ここは居場所だと、そう言ってくれた。

アリスの宿命を背負う彼も、たくさん苦しんだに違いない。

その彼が出した結論は、この学園に身を賭して生徒を、アリスを守ることだった。

「私も同じ特殊体質だ。

何かあれば、相談にのろう」

最後に志貴はそう言った。





これから私にはどんな運命が待ち受けているのだろうか。

母、文音が、梓が、命がけで切り拓いてくれた未来。

また私は、その運命に翻弄されるかもしれない。

そのたびに私はまた、決断してゆくのだろう。

一つだけ言える。

もう自分の人生をあきらめたりしない。

つなげてくれたこの命の意味、過去に一心に注がれた愛情や想いを、今、知ることができたから...

彼女たちのように、私も強い信念をもって、誰かを守りたいから...

今の、ありのままの自分を受け入れて、歩いていきたい。

新しい自分を認めて、自分にできることを探しながら...







久しぶりに出た外。

季節は変わって、風がとても冷たかった。

寒空を見上げ、想う。

蜜柑もまた、同じ空の下、この凍てつく寒さを感じているだろうか。

寂しく、ないだろうか...

風邪、引いてないだろうか...

すぐそばに、あたりまえのようにあったあの、太陽のような存在。

絶対に取り戻したいから...

私も一緒に戦うよ、蜜柑。

待ってて___



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