crown

□焔
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ラグナは酷く動揺した。

奴に大剣を突き立てた筈…なのにまるで平然としている。刃が食い込んだままで…アイツは笑っていた。

楽しそうに…







「クククッ…もしかしなくても、ビビったか?」


『ッ…!?』

「コレだけ傷があるのに、痛い顔もしないからな…怖いか?」

『くっ…テメェッ!』

「なぁ…痛いんだけど…どうにかしてくんね?」


腹部に食い込んだラグナの愛刀をゆっくり引き抜き、床へ落とす。


ガラン−−−


あ〜…いってぇなぁ…少しは加減してくれりゃ良いのに。まぁ…たいしたことはないケド
痛みは同じようにあるのに、オレにはダメージが無い。



『何者だ…お前ッ!』
「今更聞くのかよ…ラグナ?」






















オレは…




























「お前だよ…」


テメェと同じ…ラグナ=ザ=ブラッドエッジ。



『嘘だ…』

「嘘?…馬鹿じゃねーの、お前」





ビキビキと、逸れが唸った



コイツは…本当に、俺なのか

















「解ってるよな…〈ラグナ〉は二人も要らない」


どちらかが…消え去る





「此が…オレとお前の運命なんだよ」








抗う事の出来ない、オレ達だけの…


「運命…だ」



ドガァッ!






『う゛ぐあああぁッ!!!』


俺の身体は、意図も簡単に宙へ浮き上がり壁に叩きつけられた。痛みに床へ倒れ込めば次は、容赦ない蹴りが鳩尾に入る。ブーツの角がめり込み息が苦しくなってくる。

コイツは、俺を…?

ぎっと睨み付けたが、オレは…愉しそうに笑ってて


「どうだよ?…同じ顔に襲われて」

『ぐぅっ!』

「…本当、俺は弱かったんだな…無力で、吠える事しか出来ない…哀れだな」

『がぁッ……ッ!』

「力も無いのに吠えて、喚いて…全部失った」


身体が悲鳴を上げる。同時に首が締まった

ぎゅうぎゅうと…指先が食い込み、息が出来ない

苦しむ俺を見て、奴は笑った。ペロリと唇に舌を這わせると…小さく言い、寂しそうに呟く。





「本当に……哀れだな」





もう諦めろよ?
ラグナは無力で、何も出来なくて…弱いんだ。


「諦めろ…な?」

『…っだ……!』

「……そうかよ」



ドシャッ!



『ゲホッ…カハッ!』

突然首を放された事で、肺に一気に入る酸素にラグナはむせこむ。

跪いた俺を冷たく見下ろし、髪を掴み上げ奴は最後と言わんばかりに聞いてくる



「なぁ…諦めろよ?」

『…ッ』

「どっちにしても、お前は死ぬんだ…ラグナ?」

『っれは…っきらめない…絶対、に!』

「…そうかよ、そんなに…お前は」






死にてぇのかよ…






「だったら…」

『ッ……!?』

「殺す」



ブサリと胸に突き刺さる、冷たい言葉を言い放つ



「間違っても、勝つ…なんて考えるなよ?」

『ッ…なんだ?さっきから蒼の魔導書が!?』



右腕の逸れがビキビキと唸りを上げる

こんな事、今まで……なかっ…!?


はっとして奴を見た。まさか…そんなはず在るわけ。


『嘘…だろ?』
「今頃、気付いても…遅ぇぞ」

『なんで…』
「お前がどうしようもない…馬鹿だから」

『くっ…!』




来てやったんだよ…




「地獄の底からなあッ!」



腰に下げていた奴の刃が振り上げられる!
痛む身体を必死で動かし、何とかかわす事が出来た。


「逃げるなよ…つまんないだろ?」


間違いない!コイツも俺と…同じ。いや、違うんだ。奴は俺で、俺は奴なんだ…でもなんで!?


『俺はアンタが嫌いだ、憎いし…けど!』

「ケド何だ?さっきまでクソ野郎ってただろ…まさか、そんな奴を許すのか?」

『戦いたくない…』

「…理由は?」




だって…だってアンタ俺で、俺はアンタで。同じ次元に同一人物が居ることは許されない。それも判る。

『俺達二人で居ればいいだろ!』

誰に知られない場所に行けば、それで大丈夫じゃないのかよ!


「それで…自分が死んでもか?」

『俺を殺す理由が…有るのか?』

「…お前を殺す理由?そうだな…強いて言うなら」




強いて言うなら…




「欲しいから…」
『え?何…聞こえねぇ』




「ラグナ、お前が欲しいんだ…」

『ッ…/////』

「喉から、手がでるほど…お前が欲しい」

『俺だからか?』



当たり前だろ?お前じゃなきゃ意味がないんだ…




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