crown
□焔
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深い暗闇の中ーーー。
オレは小さな光を見つけた。
その小さな光は弱々しく闇の中で淡く命を灯して…オレの腕の中にいた
『……っ…ぁ………ッ』
光が小さくなっていく。
温かな光が…
お前を…
お前を失う訳には行かない…
「ラグナ…まだ、死ぬなよ…」
焔
黄金色の光、大きなその窯は既に開き…精錬が終わったことを指し示す。ゴゥゴゥと燃えさかる火炎が中でも渦巻き…まるで、誰かを待っているかのように
ぐらぐらと燃える。
『うぐわぁッ!』
「オイオイ…その程度なのかよ?」
ラグナの身体は全身、緋で染まっていた。
目の前にいる逸れから攻撃を浴びて、ボロボロだった…
そう。
自身と瓜二つ…いや、此は自分だった。
同じ紅いジャケット。大剣。違うのは…奴の瞳は焔の様に
紅かった。
「そう怒るなって…仲良くしようや?」
ラグナは本能的に気付いていた。
コレと俺は…会ってはいけないと。
『ぐっ…まだ、やれる…』
「あーあー…本当に馬鹿だな」
テメェじゃ…一生勝てっこないのに
俺は再び立ち上がる。
一応、加減しといたが…やっぱりその躯じゃ無理があるようだ。
血が止まる気配がない…お面野郎の影響だろうけど、ひでぇ有様だな。
「…まともに立つことも出来てねーし」
『…るさぃ』
「そんなに、オレが憎いのかよ…ラグナ?」
憎悪…。
会ってはいけない存在。居てはいけない存在を許す訳にはいかない。ラグナがオレに対する感情は其れだけだった
『消えろ…ッ!』
振り上げた刃…
「…愚かだな」
ガギィィン!
ぶつかりあった瞬間。俺の身体が悲鳴を上げたのだろう…更に激しく血が溢れ出る
「もう…止めにしないか、ラグナ?」
『黙れッ!消えやがれ…クソ野郎がぁ!』
「…どうしても、分かり合えないのか?」
『テメェが居なけりゃ…全部…全部ッ!』
「νを殺ったのはオレだからな…怒ってんだろ?」
『ッ…!』
俺が、壊さなければならなかった筈の相手を…
『テメェ…がぁッ!!!』
バキィ!
「ぐっ…!」
あー…痛ぇなぁったく。
ラグナにぶん殴られ、よろけた勢いで床に転がる。同じ様に、痛みを感じるオレはアイツの気持ちが分からない訳ではない…νが、俺を望んでいた事も、それで全てが丸く収まって
何時ものエンディングが待っている事も。
でもな…
「そんな終わり方…ツマラナいだろ?」
『五月蝿い!』
同じ様に…
衛士を殺して
弟と殺し合って
運命を共にするνと、一つになって…
「お前は満足なのかよ」
『黙れッ!』
床に転がったオレを見ながらラグナは、再び大剣を振り上げた
「お前に…オレが殺せるのか?」
『死ねッ!』
腹に金属が食い込む感覚…同時に燃えるように其処が激しく痛んだ
オレは、お前だ。
同じ様に痛みを感じる
だけどな…
「……ククク、ばーか」
『んなっ…馬鹿、な』
オレは同じラグナで在りながら、違ってるんだ
「悪いな…ラグナ」
『なんで…そんな、筈あるわけッ!』
*