短いはなし

□日記という君に打ち明けたい
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生真面目そう。っていうのが第一印象。

規則正しい足音にすっと伸びた背筋。
奴は中々男前な顔立ちで俺とさほど変わらない長身の持ち主だった。
俺に向かい堂々とした足取りで歩いてくるので、
生徒会の「勇気のある」生徒が俺に注意しようと歩いてきたのかもしれないと
多少憂鬱な気持で身構えて奴の動向を見守る。
だがしかし俺の前にたどり着いた奴は此方を真っ直ぐに見て、はにかんだ笑顔になる。
一体どういうことなのか訳もわからず睨んでみれば、
奴はもっと俺の頭をこんがらかせてくる。

「やあ。ヘイワジマ君。今日お昼を一緒しないか。」



奴の名前は苗字というらしい。
なんでもずっと俺の事が気になっていて食事も喉を通らない生活を続けていたらしい。
(本当にそう言ってたからどう表現したらいいかわからん)
是非友人になってほしいとかなんとか熱弁されて押されつつ
「いや、なんでもいいんだけどよ。」
と俺が行った時の動揺ぶりはすごかった。本当かいとかもう煩いったらありゃしねえ。
でもまあ、悪い奴じゃなさそうだから安心した。
だからこうしていま一緒に飯を食ってるわけで。


「自分は、平和島君との出会いを一期一会だと感じたんだ。」
ヒジキの煮物を箸に持ちながら俺に喋る苗字は、酷く真剣な表情だ。
だけどよ、なんか。言ってやった方がいいのか?まあいい。苗字の為でもあるだろ。

「あー。なんか一期一会の使い方おかしくねえ?」
ビクリ。箸の先を口に入れたまま苗字は肩を揺らし精悍な顔立ちを、
はっと赤らめる。なんだ、なんだこれは。
「……自分は、あの、そのなんと言えばいいかな。
 国語が苦手なんだ。……納得がいったかい。」
「なるほどな。いや、別に……悪くねえと思うぞ。」
一瞬だけ、なんだこいつ案外可愛い所もあるじゃねえか。
なんて、思ったのは俺が墓場まで持っていかないといけねえ秘密だ。




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