短いはなし

□人生は無理ゲーで神ゲーだ
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ロシア寿司の店内に俺とノミ蟲が同時いるっていうのは
中々珍しい光景で、俺としても、もう吐きそうな
くらいなんだが。この事態では仕方ない。
しばし休戦宣告だ。ちくしょう。
呑気にあがりを飲む苗字のせいで
滅多にお目にかかれないことが起きてるってやつだ。

「で、なんで帰ってきたのさ苗字は。……あんな壮大な別れ方しといて」
この時ばかりはノミ蟲の言うことも尤もだと思った俺は深く頷き、
奴の答えを待つ。
「んー。別に死ぬなんて言ってないぞ。俺は。」
怪しい「国産」のカニの寿司を頬張りながら苗字はご機嫌な笑顔で
首をかしげて見せる。アア本当こいつはいつもこうだったな。
色んな場所を無意識のうちのひっかきまわす天才っていうか、なんか……
「つか、俺が帰ってきたらやなのかよ。ひでえ、それでも高校での親友か?」
「誰が、苗字の親友なの。ああー、シズちゃん?ああね。」
あきれ顔でモノ言うノミ蟲、馬鹿野郎俺だってごめんだコイツなんか。
「ひでえ!傷ついた!」
「苗字が居なくなった時は確かに微妙な気分になったけどさあ?
 いるといるでいらないよねえ。死ね化け物。」
ノミ蟲の暴言に我慢ならぬといった表情で、シャリを俺の目に突っ込もうとする
苗字を止めつつ、一応聞いておく。
「……今度は何時かえるんだ。」
もうその話かい。とシャリをそのまま口に入れ嬉しそうな顔をする苗字は
ずっと昔からこの破天荒ぶりを変えちゃいないのだ。
「シズちゃんもほんと化け物だけど、運び屋よりもなによりも
 苗字が一番くそったれだね。」

悔しそうに呟くノミ蟲に苗字は笑い、
もっと仲良くしてな。と言いつつ寿司を食っている。
本当にコイツに勝てる気がしないのはなぜだろう。




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