短いはなし
□恋心というものは!
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勿論帝人だって、最初は良い人だという意識しか無かったし
まさかこんな気持ちに発展するなんて思ってもいなかった。
葛藤もあった、男が男になんて!と、悩んで悩んで夜中に吐いてしまうこともあった、
それもこれも越えてきてやっとこうなってしまったのなら
仕方ないとも思う所までたどり着いた。
(見ているだけなら何も問題ないよね)
それからだ、帝人が苗字名前の乗っている白い自転車が
あの喫茶店の前にあると必ず中に入り近くに座るのが常となったのは。
今日も同じように帝人はサンドウィッチセット(定価税込280円)を頼み、
ボウっと苗字名前のさらさらとした髪を見つめていた。
すると、ふとした瞬間苗字名前はもっていたコーヒーカップから
カフェラテをこぼしてしまったのだ、それを見た帝人が焦りハンカチを彼に渡すと
彼は驚いたような顔で
「ありがとう。」
と言ってくれた。
「あ、いや、全然!大丈夫ですか?」
帝人はもう、天にも昇らん気持ちだ。ずっと見つめるだけだった
苗字名前と会話をすることができた!と。
「その制服、来良のだよね。この辺にすんでるの?」
「え!あ、うん。君のもこの辺りの学校――」
しかし帝人にはもっと素晴らしいことが待ちうけていた。
苗字名前は帝人の行為が嬉しかったらしく
なんと友人になろうと言ってくるのだ。
竜ヶ峰帝人は心の中で呟く。
(もしかしたらこれは運命なのかな)
そう、竜ヶ峰帝人の恋物語はまだ始まったばかりである。
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