長めのはなし

□静雄さんの「飲む」話(3)
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こんなに頭が素早く動いたのは生まれて初めてかもしれない。
苗字さんは感嘆の息をほぅと漏らし俺を尊敬のまなざしで見つめている
やめてくれ。なんだかすごく心が痛む。
なんていうかこの人は本当に素直な人間なんだな。
「すげえね。シズオさん、運び屋なんだ。」
詳しいことはセルティに聞くしかない、
笑顔の苗字さんの期待を裏切るべきじゃないと俺は判断した。


今日の朝食の話をしよう。
苗字さんが俺が二日酔いでも大丈夫なようにと気遣って
食卓にはゆるい粥とカリカリ梅とジャコのフリカケのみだ。
だがしかしなんとも言えないふかふかとした米の匂いに腹が減るもんで、
フリカケも丁度いいしょっぱさなのが上乗せされ
俺は人に作ってもらった飯をがつがつと食ってしまった。
そんな俺を見た苗字さんの

「若いねえ。元気でおじさんうらやましいな。」

なんていう嬉しそうな声が聞こえなかったらゲップまでしてただろう。
ああ、怖い怖い。
というか、おじさんって言うほどの年でもないだろうに。
「……あの、苗字さんっておいくつなんですか。」
恐る恐るといった感じに聞いてみれば、
にこりと笑って苗字さんは自分自身をゆっくりと指差し、
「27。もう正直朝もなんもかも辛いよー、嫁さん欲しい。」
冗談めかしながらそんな事を言って見せる。
欲しいということは恋人はいないのだろう、


……二十後半で朝は辛いらしい、
将来の為心にキチンと留めておこう……




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