長めのはなし

□静雄さんの「飲む」話(2)
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フライ返しを持った優しそうな笑顔の男は
苗字と名乗って俺の前によっこらせと座った。
「シズオさん、ホントに覚えてないんだ。」
申し訳なくて俯きながら小さく
「はい。」
と俺がいうと苗字さんは、
明るくしかし馬鹿にする風でもなくゆったり笑うのだった。


苗字さんの話をしよう。
俺よりも少し年上だろうか、見た感じは優しそうな兄さんという感じだ。
なによりも、よっぱらいだった俺を部屋まで
運んで寝かせてくれたという、
「優しい人」の証明があることも真実だ。

しかもこの様子からすると普段の俺を全く知らないようで。
知っていたとしても「シズオさん」が
平和島静雄だとは直結してないらしい。

それから昨日の事も俺が聞くとすぐに分かりやすく説明してくれた。
なんでも、苗字さんが来た時には
もう俺はベロンベロンに酔っぱらっていたらしい。
店の人がもてあましているくらいで常連の苗字さんに
SOSを出して苗字さん緊急出動!、だったそうな。
んで、まあ。そこで苗字さんは大泣きする俺に話しかけたら、
なんだかそのまま意気投合。そのうちに俺がぶっ倒れたんで、
ほっとけん!と家までおぶってきた……と、そういうことらしい。



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