短いはなし

□いろはにほへと
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一人で新宿の駅近くにある立ち食い蕎麦屋に入ると、
高校時代のある一コマがよく思いだされる。
それはとても幸せで、それはとても秘密にしておきたいようなそんな――



その日は終業式だと言うのにシズちゃんとの喧嘩で沢山の物を壊し、
等々年度3度目の校長室呼び出しを食らう事になる。
いつもならばとっくのとうに逃げているけれど今日は保護者を呼ぶと言われた為
逃げるに逃げられなくて、誰もいない教室で名前を待つことにした。


高校卒業後すぐ働きに出た俺の従兄である名前は、海外出張で居ない
両親の代りとして俺と妹達の保護者役に買って出た人物である。
責任感が強く、心優しい名前は、俺が暴力沙汰を起こしたと聞いて
会社の制服を汗でくしゃくしゃにして、目元を真っ赤にしながら直に飛んできた。

「先生、すみません。ご迷惑かけました。……ほら、臨也。
 君も頭を下げるんだ。」

名前が俺に諭す声が聞こえて少しだけ頭を下げる。
校長の同情と呆れ、そして俺への嫌味の籠った声を聞きながら俺と名前は部屋を後にした。




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