短いはなし

□朝の魔法使い
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朝はそんなに好きじゃないな、と思う。
皆すごく忙しそうに動くし、勿論俺だって忙しく動かなくちゃいけない。
なにより眠い。
夜になってしまえば眠気はどこかに散歩にいってしまうのに、
切ないことに朝は散歩から戻ってきてしまう。
(こういうとなんだか朝帰りする不良少年みたいだね)
だから朝は好きじゃないな。と、思う。
同じような意味で朝の駅はやっぱりそんな好きじゃない。
動くのが早いし、それからすごくゴタゴタしているから
朝のだるい体には辛いものだと思う。
でも、そんな朝の駅の中でも好きになれるときがあるんだ。



「おはよう。」
赤と白のしましま定期ケースを見つけると、
俺のだるかった体がしゃっきりして、よし。って気持ちになる。
「あ、幽君。おはよう。」
しましまをぎゅっと手に持って改札まで
のったり歩いている仲のいい彼を見つけることができるから。
それだけで朝の駅はすごく楽しい場所に変わるんだ、不思議。

いつも早くついちゃえと思う長い階段も、
お腹が空く匂いを流すパン屋も、
結構いいかも。って思えたりする。不思議。



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