短いはなし

□あ、いつも見てるよ
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昨日の出来事である、午前は珍しく学校名物の二人の喧嘩に巻き込まれることもなく平和に終了し、
俺がいつも通り購買にパンを買いにいこうといそいそ廊下を歩いていた時の事。前から歩いてきた名前も知らない同級生が俺を見て一言ポツリ。呟いたのだ。
「門田ってさあ、ちょっと変わってるよねえ……―」
それだけで俺は完全に一日沈み込んでしまった。
本当に知らない奴だったのだが、一方的に知られている人間が多いのは自覚しているため探しようもなく。
これまで、何か言われても仕方ない。と思いながら過ごしてきた自分がこんなに傷つくものなのかと
実感させられてしまった。だがしかし、あんなにはっきりと自分の悪口(だと思われる)聞いたのは多分生まれて初めてだった。




「変わってる……まあ、変わってるんだろうがなあ……」
くしゃくしゃと整えたオールバックを乱しながらゆっくりと廊下を歩き、
また奴に合わないようにと心で念仏を唱えてみたりする。
が、「ヤツ」とて同じ通路を使う人間今日昨日でそれが変わるはずもなく念仏むなしくはち合わせてしまうわけである。
しかしこれがまた皮肉なもので、つい先ほどまで忘れていた
「ヤツ」の顔を一目見てしまえばまた思い出すものなのだ。


(げっ。)


と思うのも一瞬、俺はこころの中でずっと昨日から考えていた言葉をすぱっと言うことを決めた。
ここで言わなければずっとこの痛みを引きずるかもしれない、
でも改めて面と向かって言われたら……いやいや、これは最初から分かっていたこと言うしかない。
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