短いはなし

□骨になるまでに
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明るい日差しの様に暮らしたかった。
朝露の様に清廉で、北風の様に厳しくて、
夕焼けの様に切なくて、日差しの様に優しい人になりたかった。



俺は今日24になる。25になる事は永遠にない。

先月に末期ガンだと宣告されたから。
驚いた。けどそんなでもなかった。むしろ親友の方が驚いてたしツラそうだった。
俺には静雄という親友が居る。
高校の時知り合ってバカしたり色々した仲だ。
少し不器用だけど悪い奴じゃない。


今日だって家族が居ない俺の為に
池袋駅前のちっさいチェーンの居酒屋で誕生日会を開いてくれた。
もう俺は足が動かないからと車いすでも行ける店をワザワザ上司と話しあってくれたらしい。


静雄は最初俺に気を使って煙草を吸わないようにしていたが、
俺がいいんだと言うと最近はまた吸い始めた。

「なあ名前、24にもなるんだぜ。なにか呑みに行く以外にしたいことねえのかよ」

煙草をくゆらしながらほろ酔い加減の静雄はそういう。
俺はしばらく考えてちょっと言ってみる。

「海行きてえなあ。高二の夏さあ、門田と静雄と俺で行ったじゃん。九十九里」

懐かしい記憶だ。
高二の夏に急に海に行くことにした俺たちは、
学校帰りに電車を乗り継いで九十九里まで行き、
夕方の海で泳ぎまくった。
急に思い出して息が詰まりかけて酒の勢いと共に吐き出してみる。

「今二月だけどよ……ま、いっか。行くか」
酔ってるせいか、俺が死にかけてるせいか、
静雄はこの提案に乗り、俺たちは22時なのに二月の真冬なのに昔と同じ駅に向かった。




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