短いはなし

□勿論友としての愛
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苗字商店の三男坊である名前は俺の友人だ。

中学の一時期を彼と共に過ごし、
その後も交流を続けている。
彼の住む町は、所謂田舎で町内に
コンビニが一軒あるほかは食品を扱う店は
ほとんどない。
電車は通っておらずバスが朝と夜に2回ずつあるのみだ。
そのため彼は高校卒業後直に免許を取得し、
上の学校に進学した兄達の代りに
苗字商店を切り盛りしている。
とはいっても祖母が居るため面目上は手伝いなのだそうだ。

そんな彼から昨日電話がかかってきた。
なんでも近々池袋に来て少し勉強したいという。
それで俺の部屋に間借りさせてくれまいかということだった。
勿論友人であるからにはNOとは言えず
かまわないという返事をした次第だ。

そういうわけで俺の部屋にやってきた名前は、同じく部屋に時々勝手にやってくる
遊馬崎や狩沢と仲良くなっていたわけだ。

「ほんとにね、京平は良い奴だよ」

しみじみと呟く名前に、遊馬崎と狩沢は大きく頷く。

「さすが幼馴染だけあるッス。苗字さんわかってらっしゃる!」
「ドタチン色んな人から愛されてるもんね。
ところで名前クンとドタチンは
ボーイズがラブっちゃってる関係なのかな?
そうなのかな?そうだね?」

ニヤニヤと笑っている狩沢の暴走を止めつつ
名前に勉強はいいのかと尋ねる。

「ああー。構わんね。
どっちかていうと京平の顔さ見たくなっただけだからさあ。」
「そういう問題じゃねえ、
バアさんにも悪いだろ?少しは勉強していけ」

名前の好意のあからさまなこと、あからさまなこと。
にこにこと笑う顔に少しだけ頬が熱くなる、
名前の真っ直ぐな所が少し苦手だ。
好意も悪意も直に真っ直ぐ直球勝負。
悪くはないがなんだかむず痒い所だ。

「ああああ!やっぱりそうなんだね!
らぶっちゃってるんだね!」
「らぶってる?京平にか?」

こういう風に解釈してしまう奴もいるんだろうに。
慌てて友人という意味だと説明する俺と遊馬崎に
名前は楽しそうに笑う。


「そういう事なら、勿論らぶっとる」


嗚呼、コイツは。

……なんて恥ずかしい友愛。




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