小説

□愛しさのあまり
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※過激な性描写がありますので、苦手な方や18歳未満の方は閲覧をお控え下さい。





卑猥な水音とやや興奮の色が滲む吐息。
その2つの音が部屋に響き始めてから、どれくらいの時間が経っただろうか。

その音は、琴吹が茂呂のそこを口で愛でる音だった。

「ん、…ふっ…んんっ…」

琴吹の懸命な愛撫の甲斐あって、勃ち上がりにくい茂呂のそこも充分な堅さを帯び始めていた。
ちなみに琴吹のそこはというと。
もうすでに完全に硬く、大きくなっており、興奮のため先端から先走りが僅かに滲んでいるほどであった。

早く入れたい。茂の中に。

琴吹の我慢はもはや限界だった。
そろそろ次の段階に進んでもいいだろうか、などと考えていると、不意に、今の状況にはあまりに不釣り合いな音が聞こえてきた。

「ぐー…ぐー…」

まさか、と思って琴吹は茂呂の顔を見る。
その「まさか」は残念なことに、見事に的中していた。
その音は、茂呂のいびきだったのである。
茂呂は琴吹の愛撫を受けながら眠りについてしまったようだった。
これにはさすがに琴吹も落胆の色を隠せなかった。

なんということだ。
行為中に相手に眠られてしまうなんて!

そんなに自分は下手なのか?とか、長く時間をかけすぎて退屈に感じたんだろうか?とか、答えの出ない疑問を悶々と考えてしまって、琴吹は心が折れるような感覚に襲われた。
最終的に、いや、今日の茂は些か疲れているようだった、だから致し方ないのだ。と自分自身を慰めたところで琴吹はそれ以上考えるのをやめた。
そんな琴吹の心情など知るよしもない茂呂は、気持ち良さそうにいびきをかき続けている。
そんな彼を起こして再び行為の再開を強要することなど、琴吹に出来るはずもない。
琴吹はいつだって茂呂の意思を尊重し、それを可能な限り優先にして行動するという、なんとも器の大きな男なのだ。

さて、今日はもう眠るしかない。

そう思って自分も布団の中に潜り込むものの、琴吹の身体は長い時間焦らされたことで熱を帯びてしまって、性を吐き出さない限り眠ることなど不可能。といった状態になってしまっていた。
この状況から、選べる選択肢は2つ。
たぎる情欲を押し殺して布団の中で時間が過ぎるのを待つか、自分の手で己のそこを慰めるか。

(我慢できん…!)

琴吹は後者を選んだ。布団の中で自身の性器を握り、上下に動かすと、待ちに待った快楽が琴吹を襲う。

「うっ…おお…」

ふと、隣で眠る愛しい男に目をやる。
彼はなんとも穏やかな表情で寝息を立てていた。
しばらくその顔を眺めながら自身を弄っていると、ある1つの欲求が琴吹の心に沸き起こって来た。

(茂の顔にかけたい…)

自分の精液にまみれる茂呂の顔を想像すると、情欲が一気に高まるのを感じた。
そんなことをしたら茂呂が目を覚ましてしまったり、起きた時不快な思いをするかもしれない。と、普段の琴吹ならば思いとどまるだろう。
しかし、今の彼の頭の中はもはや欲望に支配されており、通常の思考などとうに失われていた。

「はあ、はあ…」

琴吹は布団から出ると、茂呂の顔のすぐそばで自身をしごき始めた。
そのうち琴吹は更なる性的興奮を求めて、起こさぬよう力を調整しながら、先端を茂呂の頬にスリスリと擦り付けた。
溢れ出ていた先走りが茂呂の顔を濡らす。
それでも茂呂は起きる気配はない。しかし、僅かに声を漏らして少々煩わしそうに顔を動かした。

「んっ……」

その表情を見た琴吹は、より自分の興奮が高まっていくのを感じた。無意識に自身をしごく手が早まるのと同時に、先端を茂呂に擦り付ける力も強くなる。

「んあぁ……」

茂呂が顔をしかめつつ声を出した。
琴吹は、起きてしまうだろうか、と思うと同時に自分の絶頂が近いことを感じていた。
こうなると後には退けない。欲に従って達するのみ。
琴吹は先端を茂呂の頬から離すと、彼の顔のすぐそばで自身を上下に力強くしごいた。

「くっ…うおおっ!」

限界を迎えると、ついに琴吹は茂呂の顔に射精してしまった。

「はあ…はあ…」

自分の精液にまみれた茂呂の顔を見ながら、琴吹は余韻に浸る。
茂呂は精液をかけられた瞬間に僅かに眉を寄せた程度で、その後特に目覚めそうな様子もなく、変わらず寝息を立てていた。
自身の欲を吐き出して冷静になった琴吹は、すまないことをしてしまったな、と自責の念に駆られ、詫びるような優しい口づけを茂呂の唇に落とした。
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