小説

□秘めたる意志
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暗闇と静寂の中に身体を同化させている時、俺が考えることは何もない。
邪念を打ち消し、近くにある木や建造物の壁に背中を合わせ、息を潜める。
そのようにして闇の一部となれば、俺の神経は格段に研ぎ澄まされる。
耳は少しの音も聞き落とさない。
目はどんな僅かな異変も見落とさない。
経験で身につけた特技と言うべきか、生まれもった体質と言うべきかは迷うところだが、確かなことは、周囲はこの暗殺者向きな自分を買っているということだ。
それは同郷の友・赤城も例に漏れない。
むしろ、誰よりも早く「暗殺者」としての俺を見抜き必要としてきたのは他でもない赤城だった。
俺は赤城に求められれば、どんなことだって応えてきた。
般若党に誘われた時も迷うことなく承諾したし、与えられた任務を拒否したことも無い。
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