小説

□眠れぬ夜は
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茂呂茂はその日、突然真夜中に目を覚ました。
寝起きの悪い彼にとって、年に1回あるかないかといったような爽快な目覚めだった。
身を起こし、窓の方に目をやる。真っ暗で夜明けには程遠い外を見て、彼は肩を落とした。

「こんな時間に目が覚めたってなぁ…何も出来やしない」

やれやれ、昼寝しすぎたのが悪かったかねぇ。そうボヤいた後、ふと自分と同じ布団で眠っている琴吹の顔を覗いた。
この状況から見てお分かり頂けるように、この2人は、まあ、そういう関係なのである。
琴吹は目を覚ます気配はない。熟睡中であった。
思えば自分はこの男の寝顔を見るのは初めてかもしれないな、と茂呂は思った。
何度もこうして一緒に寝ているのに、それも可笑しな話だと、思わず自分自身に対し呆れたような笑いを漏らす。

「そういや、このおっさんとこういう事になったのはいつからだったかな…」

茂呂は静かに呟いた後、自分と琴吹が初めて会った時の事を思い起こした。
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